第202話
文字数 818文字
「ただね。これも聞いてるかもしれないけど、今度大悟と一緒に仕事することになって。会社を共同経営する程度には信用して、赦してくれたんだなって思ったんだよね」
上島はそこでいったん黙る。まりあも彼が口を開くまで話さず待つ。しばらくして上島が顔をあげて微笑んだ。
「ここで、まりあちゃんにひとつ相談があるんだけど」
話を切り替えた上島を見る。彼は眩しいものでも見たように目を細めてまりあに微笑んだ。
「俺と賭けをしない?」
「賭け?!」
この人は一体なにを考えているのだろう。まりあが不審げな表情をすると、目の前のひとはくすりと笑った。
「そんなに警戒しないで。とって食おうなんて思っていないから。むしろまりあちゃんの方にアドバンテージがある賭けだよ」
「私にアドバンテージ。どういう賭けですか?」
上島はいったん間を置くようにして、刺身を箸ではさみ口に運ぶ。それから上目遣いにまりあを見た。
「もしまりあちゃんが大悟の引越しを阻止できたら。俺は大悟とは共同経営のパートナーと割り切ってそれ以上の関係にはならないって約束する」
上島の言葉を頭のなかで咀嚼する。それからゆっくりとたずねた。
「もし……わたしが阻止できなかったら?」
上島はにっこり笑って言った。
「あいつのことはキッパリ諦めて、大悟には金輪際近づかないでほしい」
上島の顔を見つめる。彼の表情だけではそれが罠なのか、からかっているのか全く見当がつかない。
トゲトゲのついた塊が喉のあたりをつんつんと突いてくるような感覚に、まりあは眉を寄せる。彼女はそれを押し流したい衝動に駆られて、口をつけた程度でほとんど残っていたビールのグラスを一気に煽った。
「うわ。すげえ飲みっぷり」
一気に飲み干してぷはーっと吐息をついたまりあを見て、上島が感嘆したようにそう呟いて笑った。
「上島さん」
「はい」
だん、と音をたててグラスをテーブルに置いてから、面白がるような瞳をした上島をまりあはまっすぐ見据えた。
上島はそこでいったん黙る。まりあも彼が口を開くまで話さず待つ。しばらくして上島が顔をあげて微笑んだ。
「ここで、まりあちゃんにひとつ相談があるんだけど」
話を切り替えた上島を見る。彼は眩しいものでも見たように目を細めてまりあに微笑んだ。
「俺と賭けをしない?」
「賭け?!」
この人は一体なにを考えているのだろう。まりあが不審げな表情をすると、目の前のひとはくすりと笑った。
「そんなに警戒しないで。とって食おうなんて思っていないから。むしろまりあちゃんの方にアドバンテージがある賭けだよ」
「私にアドバンテージ。どういう賭けですか?」
上島はいったん間を置くようにして、刺身を箸ではさみ口に運ぶ。それから上目遣いにまりあを見た。
「もしまりあちゃんが大悟の引越しを阻止できたら。俺は大悟とは共同経営のパートナーと割り切ってそれ以上の関係にはならないって約束する」
上島の言葉を頭のなかで咀嚼する。それからゆっくりとたずねた。
「もし……わたしが阻止できなかったら?」
上島はにっこり笑って言った。
「あいつのことはキッパリ諦めて、大悟には金輪際近づかないでほしい」
上島の顔を見つめる。彼の表情だけではそれが罠なのか、からかっているのか全く見当がつかない。
トゲトゲのついた塊が喉のあたりをつんつんと突いてくるような感覚に、まりあは眉を寄せる。彼女はそれを押し流したい衝動に駆られて、口をつけた程度でほとんど残っていたビールのグラスを一気に煽った。
「うわ。すげえ飲みっぷり」
一気に飲み干してぷはーっと吐息をついたまりあを見て、上島が感嘆したようにそう呟いて笑った。
「上島さん」
「はい」
だん、と音をたててグラスをテーブルに置いてから、面白がるような瞳をした上島をまりあはまっすぐ見据えた。