第13話
文字数 986文字
「名字が板野で思いだした。去年だっけ。ポストに引っ越しの挨拶で手拭いをいれてたの、あなたなのね」
「あ、そうですそうです。手拭いを入れました。カ、カミチャタニさんの部屋、何度行っても留守だったから」
平日は会社があるから週末の土日、何度か隣室のブザーを押してみたけれど全く反応がなかった。仕方なくよろしくお願いしますとメモに名前を書いて、手拭いと一緒にポストインし挨拶を終わらせていたのを思い出した。
「手数をかけさせて悪かったわね。あの手拭いのチョイス、結構好みだったから覚えてる」
小物のセンスなどにうるさそうに見える上茶谷にそう言われて、まりあはぱあっと満面の笑みを浮かべる。
「よかった! カワイイですよね! パンダが転がって竹を食べてる柄をみた瞬間ひとめぼれしちゃって。自分用にもゲットしたんですよ」
そんなまりあの笑顔を見て、上茶谷はすっと目を細めた。
「ああ、あなた好きそうよね。ああいうテイスト。わたしも好きよ。和風なもの好きなの」
男女問わず綺麗な人にこうして同意してもらえるとテンションがあがってしまう。
「気に入ってもらって良かった。何回も手拭いを持ってお部屋にいったんですけど、全然いらっしゃらなくて。今日はまた、なんでいらっしゃったんですか?」
その言葉に上茶谷が口元を緩めて苦笑した。
「そりゃ自分の部屋なんだからいる時はいるわよ。火曜日が休みだから用事がなければ部屋でのんびりしてる」
「火曜日がお休み……。カミ、カミチャタニさんはもしかして美容師さんとかですか?」
上茶谷がサラサラな髪を揺らして頷いた。
「正解。だから土日はいないのよ。まりあは会社勤めなんでしょ。生活時間帯とかずれていそうだし普通は顔合わせることないわよね、私たち」
なるほど美容師なら美意識高い美形男子もそりゃいるだろうとまりあはひとり納得する。
「そうですよね。Gがいなかったら会う機会なんてなかったかもしれません」
まりあが大真面目な口調でそういうと上茶谷が吹きだした。
「Gに仲介されて知り合いになるとか、ちょっと嫌ね」
「でもGが出て最悪なことばかりだったから、イイコトのひとつもないとやってられません」
そんなことをペロッと言ってしまったあと、まりあはハッとする。上茶谷と知り合いになれて喜んでいる自分をなんの衒 いもなく意思表明してしまった気がして、かあっと頬のあたりが熱くなる。
「あ、そうですそうです。手拭いを入れました。カ、カミチャタニさんの部屋、何度行っても留守だったから」
平日は会社があるから週末の土日、何度か隣室のブザーを押してみたけれど全く反応がなかった。仕方なくよろしくお願いしますとメモに名前を書いて、手拭いと一緒にポストインし挨拶を終わらせていたのを思い出した。
「手数をかけさせて悪かったわね。あの手拭いのチョイス、結構好みだったから覚えてる」
小物のセンスなどにうるさそうに見える上茶谷にそう言われて、まりあはぱあっと満面の笑みを浮かべる。
「よかった! カワイイですよね! パンダが転がって竹を食べてる柄をみた瞬間ひとめぼれしちゃって。自分用にもゲットしたんですよ」
そんなまりあの笑顔を見て、上茶谷はすっと目を細めた。
「ああ、あなた好きそうよね。ああいうテイスト。わたしも好きよ。和風なもの好きなの」
男女問わず綺麗な人にこうして同意してもらえるとテンションがあがってしまう。
「気に入ってもらって良かった。何回も手拭いを持ってお部屋にいったんですけど、全然いらっしゃらなくて。今日はまた、なんでいらっしゃったんですか?」
その言葉に上茶谷が口元を緩めて苦笑した。
「そりゃ自分の部屋なんだからいる時はいるわよ。火曜日が休みだから用事がなければ部屋でのんびりしてる」
「火曜日がお休み……。カミ、カミチャタニさんはもしかして美容師さんとかですか?」
上茶谷がサラサラな髪を揺らして頷いた。
「正解。だから土日はいないのよ。まりあは会社勤めなんでしょ。生活時間帯とかずれていそうだし普通は顔合わせることないわよね、私たち」
なるほど美容師なら美意識高い美形男子もそりゃいるだろうとまりあはひとり納得する。
「そうですよね。Gがいなかったら会う機会なんてなかったかもしれません」
まりあが大真面目な口調でそういうと上茶谷が吹きだした。
「Gに仲介されて知り合いになるとか、ちょっと嫌ね」
「でもGが出て最悪なことばかりだったから、イイコトのひとつもないとやってられません」
そんなことをペロッと言ってしまったあと、まりあはハッとする。上茶谷と知り合いになれて喜んでいる自分をなんの