第234話
文字数 670文字
まりあは数秒、穴があくほど上茶谷の顔をみつめた後戸惑いがちに口を開いた。
「ダ、ダイゴさん、もしかして酔ってます?」
「全然」
にっこり微笑んでそう答えるとまりあは今度こそ驚いたように大きく瞳を見開いて、口をぱくぱくさせる。その時だった。ドアの鍵がかちゃりとまわる音がリビングにまで響いてきた。坂口が帰ってきたのだ。上茶谷は苦笑を浮かべてドアの方向へ視線を向ける。
スーツ姿の坂口がリビングにはいってきたが、二人の姿をみて一瞬立ち止まった。けれど何事もなかったようにネクタイを緩め、すぐにソファに腰をおろした。
「ただいま戻りました。ふたりで酒盛りですか。ずるいな。俺も混ぜてくださいよ」
スーツ姿そのままでいる坂口に、まりあが少し驚いたようにたずねた。
「坂口くん、スーツ脱いでこないの? 疲れるからっていつもすぐ着替えるのに」
まりあの言葉に軽く首を傾げたあと、坂口は曖昧に微笑んだ。
「今日はなんとなく着替えたくない気分なんで」
そういってちらりと上茶谷に視線を投げてきたから苦笑する。坂口はおそらくいつもとは微妙に違う二人の空気に気づいたのだ。目の縁が少し赤いから多少酔っている様子だが、相変わらずそのあたりの嗅覚は鋭い。
「あ、そうだ。坂口くんも帰ってきたし、作り置きしてきた鶏ハムでも切ってこようかなー」
なんとなく沈黙が落ちて固くなった空気をほぐそうとしているのか、まりあは明るい調子でそういってキッチンのほうへと歩いていった。その背中を見つめていた坂口がぼそりと呟いた。
「とうとう仕掛けてきましたか」
彼の言葉に上茶谷は笑ってしまう。
「ダ、ダイゴさん、もしかして酔ってます?」
「全然」
にっこり微笑んでそう答えるとまりあは今度こそ驚いたように大きく瞳を見開いて、口をぱくぱくさせる。その時だった。ドアの鍵がかちゃりとまわる音がリビングにまで響いてきた。坂口が帰ってきたのだ。上茶谷は苦笑を浮かべてドアの方向へ視線を向ける。
スーツ姿の坂口がリビングにはいってきたが、二人の姿をみて一瞬立ち止まった。けれど何事もなかったようにネクタイを緩め、すぐにソファに腰をおろした。
「ただいま戻りました。ふたりで酒盛りですか。ずるいな。俺も混ぜてくださいよ」
スーツ姿そのままでいる坂口に、まりあが少し驚いたようにたずねた。
「坂口くん、スーツ脱いでこないの? 疲れるからっていつもすぐ着替えるのに」
まりあの言葉に軽く首を傾げたあと、坂口は曖昧に微笑んだ。
「今日はなんとなく着替えたくない気分なんで」
そういってちらりと上茶谷に視線を投げてきたから苦笑する。坂口はおそらくいつもとは微妙に違う二人の空気に気づいたのだ。目の縁が少し赤いから多少酔っている様子だが、相変わらずそのあたりの嗅覚は鋭い。
「あ、そうだ。坂口くんも帰ってきたし、作り置きしてきた鶏ハムでも切ってこようかなー」
なんとなく沈黙が落ちて固くなった空気をほぐそうとしているのか、まりあは明るい調子でそういってキッチンのほうへと歩いていった。その背中を見つめていた坂口がぼそりと呟いた。
「とうとう仕掛けてきましたか」
彼の言葉に上茶谷は笑ってしまう。