第46話

文字数 575文字

「うーーん」

 道路をあるいているサラリーマンたちを見るともなく見つめながら、まりあはおにぎりをパクリとかぶりついて小さく唸った。

 まりあは基本的には出勤してリモートワークしている派遣社員やパートさんの仕事を取りまとめなくてはならないので、会社にくる頻度は高い。そのたびにお昼を外食にしていると食費がかさむため、お弁当をもってきている。席で食べると、仕事の続きみたいでリラックスできないから、よほど忙しい時と天気が悪くない限り公園にきて、ベンチに座ってお弁当を食べることにしているのだ。今日はベンチランチ仲間のナナは電話当番なので、まりあはひとりでおにぎりにかぶりついている。食べながらも頭のなかでは、先日の出来事が頭のなかでぐるぐるとローディングしている古いパソコンのような状態になっている。

 上茶谷とうどんを食べたのはすごくよかったと思っている。彼の表情がとてもほぐれた感じがしていたし、まりあの部屋にいた彼は間違いなく寛いでいたと思う。問題はお見舞いに買ったマドレーヌとガナッシュの詰め合わせを渡すのを忘れていたのに気付き、外にでた上茶谷を追いかけたときだ。ドアを開けたら目の前に上茶谷の背中が見えたからすぐ声を掛けたのに、彼は固まったまま動かなかった。おかしい。そう思って上茶谷の見ている方へ目を向けると、びっくりするほど強い視線にぶつかった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

【主要キャラ】


・板野まりあ(いたのまりあ)31歳 保険会社勤務の会社員 天然系ですこしぼけているけれど、自炊して節約するしっかりモノ。



ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み