第34話
文字数 671文字
「とりあえず部屋に戻ってシャワーあびてきていいかしら。今日は早く休みたくて」
そうたずねてきた上茶谷に対してまりあは真面目な顔をして重々しく頷く。
「勿論です。カミ、カミチャタニさんは食べてすぐ寝てください」
上茶谷は目尻に軽くシワを寄せて今度は我慢できなかった、というようにふきだす。
「食べてすぐ寝ろって……牛じゃないんだから。あ、それからね。カミ、カミチャタニってあなたが噛みそうになりながら言うのを聞くたびに落ち着かなくなるから、下の名前で呼んでくれる?」
「下のお名前、ですか? ええと聞いてましたっけ」
上茶谷は一瞬間を置いたあと首を振って微笑んだ。
「教えてなかったかもね。……大悟 って名前だから」
「ダイゴさん……カッコイイお名前ですね」
男っぽい名前だ。けれど凛とした響きが上茶谷には合っているとまりあは感じた。彼はありがとうと笑う。そういえばまりあは最初から名前で呼ばれていたことを思い出してなんでだろうと小さく首を傾げた。
「じゃあ八時頃部屋にいくわね。襲わないでよ」
「それ、コッチのセリフですからっ!」
そう言われた勢い、握りこぶしをブンブン振ると、上茶谷は声に出して笑う。一緒に階段をのぼり、じゃあ後でねと片手をあげてドアを開けて入っていく上茶谷を見つめる。さきほど会ったときより彼がすこし元気なったような感触が確かにあった。人魚姫をこの世に引き留めることができたような達成感によし、とこぶしを握りしめる。
「あ、早くうどんの支度しなきゃ」
気づかないうちにまた一人で頷き、鍵をガチャガチャとあけてまりあも部屋のなかに飛び込んだ。
そうたずねてきた上茶谷に対してまりあは真面目な顔をして重々しく頷く。
「勿論です。カミ、カミチャタニさんは食べてすぐ寝てください」
上茶谷は目尻に軽くシワを寄せて今度は我慢できなかった、というようにふきだす。
「食べてすぐ寝ろって……牛じゃないんだから。あ、それからね。カミ、カミチャタニってあなたが噛みそうになりながら言うのを聞くたびに落ち着かなくなるから、下の名前で呼んでくれる?」
「下のお名前、ですか? ええと聞いてましたっけ」
上茶谷は一瞬間を置いたあと首を振って微笑んだ。
「教えてなかったかもね。……
「ダイゴさん……カッコイイお名前ですね」
男っぽい名前だ。けれど凛とした響きが上茶谷には合っているとまりあは感じた。彼はありがとうと笑う。そういえばまりあは最初から名前で呼ばれていたことを思い出してなんでだろうと小さく首を傾げた。
「じゃあ八時頃部屋にいくわね。襲わないでよ」
「それ、コッチのセリフですからっ!」
そう言われた勢い、握りこぶしをブンブン振ると、上茶谷は声に出して笑う。一緒に階段をのぼり、じゃあ後でねと片手をあげてドアを開けて入っていく上茶谷を見つめる。さきほど会ったときより彼がすこし元気なったような感触が確かにあった。人魚姫をこの世に引き留めることができたような達成感によし、とこぶしを握りしめる。
「あ、早くうどんの支度しなきゃ」
気づかないうちにまた一人で頷き、鍵をガチャガチャとあけてまりあも部屋のなかに飛び込んだ。