第199話
文字数 737文字
思い切ってまりあがそう切り出してみたものの、上島はうーんと言って首を捻りながら笑った。
「別にこれといって特別な話がある訳じゃないんだけどね」
「えっ? そうなんですか?」
個室とはいえ大声を出してしまいまりあは慌てて口に手のひらをあてた。そんな彼女を見て上島はにっこり微笑んだ。
「ちょっとね。まりあちゃんとサシで話してみたかったんだ。どんなコなのかなって興味があったから」
「興味……ですか。上島さんめちゃくちゃ忙しそうなのに、フットワーク軽いですね」
まりあが何気なく返した言葉に、上島は真面目な瞳をのぞかせて首を振った。
「俺は興味があればどんなに忙しくても時間はつくるよ。時間がないことを言い訳にして、知りたいことを知らずにいるってめっちゃ損だと思ってるから」
勢いのある会社のトップというのはこういうものなのだろうか。まりあは鱧を食べながら深く頷くと上島は表情を緩めてニヤリと笑った。
「……なーんてエラそうなことをいったけど。まりあちゃんと話をしたかったのは興味だけじゃなかったかもしれない」
「へ?」
まりあが食べる手を止めて首を傾げると、彼はなんでもない事のようにさらりと続けた。
「ハニトラを仕掛けようと思っていたんだけどね。まりあちゃんには通用しなさそうだからやめた」
「 ハ、ハニトラ?」
箸を置く。微かなアルコールでとっちらかりそうになっている思考をかき集めたあと、まりあが上島に問いかける。
「それってハニートラップのことですか?」
上島は正解! と言って無邪気にさえ見える笑顔を見せる。ちょうどその時、料理を運んできた女将に上島がビールのグラス追加とアルコールはいらないというまりあにはお茶を頼む。女将がいなくなり二人きりに戻った空間で、上島は再び口を開いた。
「別にこれといって特別な話がある訳じゃないんだけどね」
「えっ? そうなんですか?」
個室とはいえ大声を出してしまいまりあは慌てて口に手のひらをあてた。そんな彼女を見て上島はにっこり微笑んだ。
「ちょっとね。まりあちゃんとサシで話してみたかったんだ。どんなコなのかなって興味があったから」
「興味……ですか。上島さんめちゃくちゃ忙しそうなのに、フットワーク軽いですね」
まりあが何気なく返した言葉に、上島は真面目な瞳をのぞかせて首を振った。
「俺は興味があればどんなに忙しくても時間はつくるよ。時間がないことを言い訳にして、知りたいことを知らずにいるってめっちゃ損だと思ってるから」
勢いのある会社のトップというのはこういうものなのだろうか。まりあは鱧を食べながら深く頷くと上島は表情を緩めてニヤリと笑った。
「……なーんてエラそうなことをいったけど。まりあちゃんと話をしたかったのは興味だけじゃなかったかもしれない」
「へ?」
まりあが食べる手を止めて首を傾げると、彼はなんでもない事のようにさらりと続けた。
「ハニトラを仕掛けようと思っていたんだけどね。まりあちゃんには通用しなさそうだからやめた」
「 ハ、ハニトラ?」
箸を置く。微かなアルコールでとっちらかりそうになっている思考をかき集めたあと、まりあが上島に問いかける。
「それってハニートラップのことですか?」
上島は正解! と言って無邪気にさえ見える笑顔を見せる。ちょうどその時、料理を運んできた女将に上島がビールのグラス追加とアルコールはいらないというまりあにはお茶を頼む。女将がいなくなり二人きりに戻った空間で、上島は再び口を開いた。