第174話
文字数 568文字
「お店を引き継いでさらに新規に事業をたちあげることにもなりそうだから、すごく忙しくて。でもよかった。私もまりあに話したいことがあったの」
「新規の事業、ですか?」
上茶谷の言葉にまりあが瞳を見開くと、彼はうなづいてほんの少し真面目な表情になった。
「あのね……」
そこでいったん言葉を飲み込んだあと、彼は言葉を慎重に取り出すようにゆっくり口を開いた。
「仕事がしばらく忙しくなりそうだから、職場から近いマンションに引っ越すことに決めたの」
「え……」
彼の言葉にまりあの頭は真っ白になっていく。上茶谷の言っている事は理解はできるけれど、うまく咀嚼できない。
「それはその……お隣の部屋からいなくなっちゃうってことですか」
堅くて消化しにくいものを噛み砕くようにしてそう問いかけると、上茶谷は頷いた。
「そう。まりあがお隣さんで楽しかったから、残念なんだけど」
そういって困ったように微笑んだ上茶谷をまりあは呆然と見つめた。
(お隣さんで楽しかったから、残念……)
映画の終わり、エンドロールのクレジットのように、その言葉がまりあの頭の中をすうっと流れていく。ふたりの関係はその程度のものだったのだろうか。何かちゃんとした事を言いたいと思うのに、言葉にすることができない。そんなまりあを見ていた上茶谷の表情も雲っていく。そっと手を伸ばして、頭をなでた。
「新規の事業、ですか?」
上茶谷の言葉にまりあが瞳を見開くと、彼はうなづいてほんの少し真面目な表情になった。
「あのね……」
そこでいったん言葉を飲み込んだあと、彼は言葉を慎重に取り出すようにゆっくり口を開いた。
「仕事がしばらく忙しくなりそうだから、職場から近いマンションに引っ越すことに決めたの」
「え……」
彼の言葉にまりあの頭は真っ白になっていく。上茶谷の言っている事は理解はできるけれど、うまく咀嚼できない。
「それはその……お隣の部屋からいなくなっちゃうってことですか」
堅くて消化しにくいものを噛み砕くようにしてそう問いかけると、上茶谷は頷いた。
「そう。まりあがお隣さんで楽しかったから、残念なんだけど」
そういって困ったように微笑んだ上茶谷をまりあは呆然と見つめた。
(お隣さんで楽しかったから、残念……)
映画の終わり、エンドロールのクレジットのように、その言葉がまりあの頭の中をすうっと流れていく。ふたりの関係はその程度のものだったのだろうか。何かちゃんとした事を言いたいと思うのに、言葉にすることができない。そんなまりあを見ていた上茶谷の表情も雲っていく。そっと手を伸ばして、頭をなでた。