第216話
文字数 632文字
「坂口くん……」
ドアをあけた上茶谷の後ろからまりあが見つめた先、目が合った坂口はひどく真面目な顔をしたまま頭をさげた。
「すいません。こんな時間に押しかけてしまって」
「ど、どうしたの?」
坂口はまるで仕事をしているときのようなビジネスライクな口調で呟いた。
「さっき電話をしたとき。実は俺、駅にいたんです」
「ええっ?!」
まりあは思わずのけぞった。上茶谷にちゃんと気持ちを話そう。そう覚悟を決めて彼をアパートの廊下で待っていたその時に、坂口から電話があった。
結局ナナは、金髪のイケメンとまりあがふたりきりで出かけていったと坂口に告げたらしい。それを聞いて坂口はまりあに電話をしてきたのだ。彼は上島とも面識があったから、金髪男は上茶谷と一緒にいた人だとすぐにピンときたのだという。だから彼との関係を疑うというよりも、どうしてあの人とふたりで会う必要があるのか。その事が腑に落ちなかったようだった。
坂口とああでもないこうでもないと話をしていたところで、上茶谷が階段を昇ってきたので電話を切ってしまった。坂口にとってみれば曖昧な状態で放置されたから、こうして直接訪ねてきたのだろう。
「これから行ってもいいですか、ってまりあさんにたずねようとしたら、電話を切られてしまって。どうしようかとちょっと考えたんですけど、せっかく駅まできたんだし、……なにより俺が納得できないからこうして来ちゃいました。こんな時間に部屋に来るなんてマナー違反だってわかっています。すいません」
ドアをあけた上茶谷の後ろからまりあが見つめた先、目が合った坂口はひどく真面目な顔をしたまま頭をさげた。
「すいません。こんな時間に押しかけてしまって」
「ど、どうしたの?」
坂口はまるで仕事をしているときのようなビジネスライクな口調で呟いた。
「さっき電話をしたとき。実は俺、駅にいたんです」
「ええっ?!」
まりあは思わずのけぞった。上茶谷にちゃんと気持ちを話そう。そう覚悟を決めて彼をアパートの廊下で待っていたその時に、坂口から電話があった。
結局ナナは、金髪のイケメンとまりあがふたりきりで出かけていったと坂口に告げたらしい。それを聞いて坂口はまりあに電話をしてきたのだ。彼は上島とも面識があったから、金髪男は上茶谷と一緒にいた人だとすぐにピンときたのだという。だから彼との関係を疑うというよりも、どうしてあの人とふたりで会う必要があるのか。その事が腑に落ちなかったようだった。
坂口とああでもないこうでもないと話をしていたところで、上茶谷が階段を昇ってきたので電話を切ってしまった。坂口にとってみれば曖昧な状態で放置されたから、こうして直接訪ねてきたのだろう。
「これから行ってもいいですか、ってまりあさんにたずねようとしたら、電話を切られてしまって。どうしようかとちょっと考えたんですけど、せっかく駅まできたんだし、……なにより俺が納得できないからこうして来ちゃいました。こんな時間に部屋に来るなんてマナー違反だってわかっています。すいません」