第116話
文字数 704文字
上茶谷はバックヤードでひとり丸椅子に座っていた。昼に食べそこねていたサンドイッチを空腹を満たすため腹に入れ、大きなため息をついた時にドアが開いた。リカコだった。
「お疲れ様。もう帰るとこ?」
「そろそろ帰ります。リカコさんこそお店にずっといたんですか」
リカコは首を振って笑う。
「銀行で打ち合わせをしててね。ようやく終わったからちょっとお店に寄っただけ」
よっこいしょ、といいながら隣に座ったから、上茶谷もお疲れ様ですと言いながらすかさずからかう。
「リカコさん、その掛け声ババくさいですよ」
「仕方ないでしょ。それなりにいい歳なんだから」
口をへの字にしてみせて苦笑した後、さり気ない調子で切り出してくる。
「上島くんと共同経営の話、したんだって?」
「ええ。しましたよ」
上茶谷も何気ない様子で答える。
「どうだった?」
リカコは鮮やかな赤に金が縁取られたフレンチネイルが施された指先を、じっと見つめたままたずねてくる。
「ちょっと考えさせてくれって言いました。すぐには答えなんて出ないですから……」
リカコは下を向いたまま微笑んだ。
「ヨリを戻すのは考えられないって言われたって、彼泣いてたわよ?」
「泣くわけないでしょう、あの男 が」
上茶谷が呆れたようにそういって苦笑すると、彼女はふふ、と微笑んだ。
「カットモデルに来たまりあちゃん、だっけ? 上島くんがやたら気にしてたのって彼女でしょ。カミちゃんとまりあちゃんが仲がよすぎるって、嘆いてもいたわね」
上茶谷は小さくため息ついて首を振る。
「……まりあは友だちですよ」
「ふうん、友だちね」
リカコがそこで組んだ脚のうえに肘をついて頬杖すると、上茶谷のほうへ視線を向ける。
「お疲れ様。もう帰るとこ?」
「そろそろ帰ります。リカコさんこそお店にずっといたんですか」
リカコは首を振って笑う。
「銀行で打ち合わせをしててね。ようやく終わったからちょっとお店に寄っただけ」
よっこいしょ、といいながら隣に座ったから、上茶谷もお疲れ様ですと言いながらすかさずからかう。
「リカコさん、その掛け声ババくさいですよ」
「仕方ないでしょ。それなりにいい歳なんだから」
口をへの字にしてみせて苦笑した後、さり気ない調子で切り出してくる。
「上島くんと共同経営の話、したんだって?」
「ええ。しましたよ」
上茶谷も何気ない様子で答える。
「どうだった?」
リカコは鮮やかな赤に金が縁取られたフレンチネイルが施された指先を、じっと見つめたままたずねてくる。
「ちょっと考えさせてくれって言いました。すぐには答えなんて出ないですから……」
リカコは下を向いたまま微笑んだ。
「ヨリを戻すのは考えられないって言われたって、彼泣いてたわよ?」
「泣くわけないでしょう、あの
上茶谷が呆れたようにそういって苦笑すると、彼女はふふ、と微笑んだ。
「カットモデルに来たまりあちゃん、だっけ? 上島くんがやたら気にしてたのって彼女でしょ。カミちゃんとまりあちゃんが仲がよすぎるって、嘆いてもいたわね」
上茶谷は小さくため息ついて首を振る。
「……まりあは友だちですよ」
「ふうん、友だちね」
リカコがそこで組んだ脚のうえに肘をついて頬杖すると、上茶谷のほうへ視線を向ける。