第156話
文字数 712文字
「ところで例の件、確認してもいいですか?」
仕事みたいな口調で坂口が切り出してきた。けれど今ふたりがいる場所はちょっとお洒落な居酒屋だ。カーテンで仕切られていているテーブル席はプライベート空間になり、まさにふたりきりの状態。そんな密室ふたりだと緊張しそうだと思いつつちゃんと話をするにはこれくらいがいいと腹を括ってまりあが選んだ。
とりあえずビールで乾杯し、仕事のあとで空腹だったふたりは、でてきた突き出しと注文したサラダを無言でペロリと平らげた。顔を見合わせ、笑いながら追加注文をしたその後、間が空いたタイミングに坂口がたずねてきたのだ。まりあは箸を置いて、姿勢をただす。
「例の件って……」
坂口がほんの少し、首を傾けたあと微笑んだ。
「俺、板野さんとつきあえますか?」
出掛けてしまう飼い主をじっと見つめてくるわんこみたいな不安げな瞳をした坂口に、まりあはちゃんと言おうと思っていた言葉が、喉のあたりで止まってしまう。こんな顔をしてこんな風に聞かれてしまったら、まりあもなんと言っていいかわからなくなってしまう。
「えーと。坂口くん」
「はい」
坂口も背筋を伸ばす。そしてまっすぐに見つめてきた。まりあはようやく覚悟を決めて、準備していた言葉を舌にのせる。
「あのね……。気持ちはすごくすごく嬉しいのだけど……」
そこまで言ったところで、坂口はすぐに苦笑を浮かべ軽く手を挙げた。
「ストップ!」
半分口が開いたまま状態で、停止状態に陥ったまりあを見て坂口が困ったように微笑んだ。
「とりあえずソコは割愛させて貰っていいですか。聞くと萎えてしまいそうになるので。今は飛ばしてもらって、俺と付き合えない理由をまずは教えてもらえますか?」
仕事みたいな口調で坂口が切り出してきた。けれど今ふたりがいる場所はちょっとお洒落な居酒屋だ。カーテンで仕切られていているテーブル席はプライベート空間になり、まさにふたりきりの状態。そんな密室ふたりだと緊張しそうだと思いつつちゃんと話をするにはこれくらいがいいと腹を括ってまりあが選んだ。
とりあえずビールで乾杯し、仕事のあとで空腹だったふたりは、でてきた突き出しと注文したサラダを無言でペロリと平らげた。顔を見合わせ、笑いながら追加注文をしたその後、間が空いたタイミングに坂口がたずねてきたのだ。まりあは箸を置いて、姿勢をただす。
「例の件って……」
坂口がほんの少し、首を傾けたあと微笑んだ。
「俺、板野さんとつきあえますか?」
出掛けてしまう飼い主をじっと見つめてくるわんこみたいな不安げな瞳をした坂口に、まりあはちゃんと言おうと思っていた言葉が、喉のあたりで止まってしまう。こんな顔をしてこんな風に聞かれてしまったら、まりあもなんと言っていいかわからなくなってしまう。
「えーと。坂口くん」
「はい」
坂口も背筋を伸ばす。そしてまっすぐに見つめてきた。まりあはようやく覚悟を決めて、準備していた言葉を舌にのせる。
「あのね……。気持ちはすごくすごく嬉しいのだけど……」
そこまで言ったところで、坂口はすぐに苦笑を浮かべ軽く手を挙げた。
「ストップ!」
半分口が開いたまま状態で、停止状態に陥ったまりあを見て坂口が困ったように微笑んだ。
「とりあえずソコは割愛させて貰っていいですか。聞くと萎えてしまいそうになるので。今は飛ばしてもらって、俺と付き合えない理由をまずは教えてもらえますか?」