第43話
文字数 890文字
「やったー! めちゃくちゃうれしい」
本気喜んでいる様子に上茶谷の口元も弛む。
「カットとカラー、それからデジタルパーマもするから。そうね三時間はみといて」
その言葉に、まりあの表情がふと曇った。
「え。そんな盛りだくさん? えと……合計でおいくらですか?」
まりあは頭のなかで料金を計算しているらしくおずおずと聞いてくるから、上茶谷は笑いを噛み殺してあえて真面目な顔で答えた。
「無料 よ。お礼だもの。お金は取りません」
「無料 ?!」
まりあがあまりにも大きな声で叫ぶから、近所迷惑だからとしぃーと人差し指を口元にあてる。
「タダにきまってるでしょ。安心しなさい」
「いやいやいやいや!」
まりあが眉を寄せブンブンと首を振る。
「ダイゴさんの美容室の料金をホームページでみましたけど、その内容だと指名料あわせて軽く二万円以上しますよね? うどんで二万円てわらしべ長者にも程がありますよ」
「わらしべ長者にも程がある!」
上茶谷は復唱してしまい、ふきだしてしまう。
「まりあと話していると、いっつも笑ってるわ私。あなたって会社でもそういうキャラなの?」
まりあは真面目な顔をして首をふる。
「まさか。ちゃんとした中堅 社員ですよ。話しててこんなに笑うのってダイゴさんくらいです」
まりあが口にした"中堅"が"忠犬"に脳内変換されて、余計可笑しくなってきたものの上茶谷はなんとか堪えた。厳しい審美眼をもった上茶谷からみても、まりあの見た目は悪くないし磨けばさらに可愛くなる可能性もある。性格もさっぱりしていて真面目な顔をしてトボけたことを言うのも愛嬌があって面白い。
本人は気付いていないかもしれないが、そんなまりあを構いたいと思っている男が、おそらく彼女の周りにいるだろう。彼女がその気になれば男 を見つけようと思えば見つけられそうなのに。どうして三十一歳の誕生日にひとりでケーキを食べていたのか。上茶谷の周りにいる、まりあと似た年齢の女の子たちは誕生日やクリスマスなどのイベントを一人で過ごすことをひどく恐れていたからふと疑問に思ったものの、まりあらしいといえばまりあらしいかもしれないと上茶谷は微笑む。
本気喜んでいる様子に上茶谷の口元も弛む。
「カットとカラー、それからデジタルパーマもするから。そうね三時間はみといて」
その言葉に、まりあの表情がふと曇った。
「え。そんな盛りだくさん? えと……合計でおいくらですか?」
まりあは頭のなかで料金を計算しているらしくおずおずと聞いてくるから、上茶谷は笑いを噛み殺してあえて真面目な顔で答えた。
「
「
まりあがあまりにも大きな声で叫ぶから、近所迷惑だからとしぃーと人差し指を口元にあてる。
「タダにきまってるでしょ。安心しなさい」
「いやいやいやいや!」
まりあが眉を寄せブンブンと首を振る。
「ダイゴさんの美容室の料金をホームページでみましたけど、その内容だと指名料あわせて軽く二万円以上しますよね? うどんで二万円てわらしべ長者にも程がありますよ」
「わらしべ長者にも程がある!」
上茶谷は復唱してしまい、ふきだしてしまう。
「まりあと話していると、いっつも笑ってるわ私。あなたって会社でもそういうキャラなの?」
まりあは真面目な顔をして首をふる。
「まさか。ちゃんとした
まりあが口にした"中堅"が"忠犬"に脳内変換されて、余計可笑しくなってきたものの上茶谷はなんとか堪えた。厳しい審美眼をもった上茶谷からみても、まりあの見た目は悪くないし磨けばさらに可愛くなる可能性もある。性格もさっぱりしていて真面目な顔をしてトボけたことを言うのも愛嬌があって面白い。
本人は気付いていないかもしれないが、そんなまりあを構いたいと思っている男が、おそらく彼女の周りにいるだろう。彼女がその気になれば