第50話
文字数 938文字
恋人じゃなくて親友同士だったかもしれない。けれどなにか大きなすれ違い、たとえば女の人を取り合ってが仲違いした、とか。そこまで考えてまりあはううむと唸る。
「でもこんなことをいくら妄想しても、妄想でしかないしなあ」
ため息混じりにそう呟いた時だった。
「何を妄想してんすか?」
背後からいきなり声をかけられて、まりあはベンチから数センチ飛び上がらんばかりに驚いた。振り向くと、上着とコンビニの袋を手に持ったワイシャツ姿の坂口が、面白そうにまりあを見ていた。
「相変わらず百面相して独り言全開ですね」
クスクス笑いながら隣いいですか、といいながらさっさと座ってしまう坂口にまりあは苦笑するしかない。
「ひどい言い方。独り言は否定しないけど百面相なんてしてないよ。それより今日一日外出って予定表にあった気がしたけど」
プラスチックの袋から大きな弁当を取り出した坂口の横顔を見ながらまりあがたずねた。
「午後に予定していた競合代理店へのプレゼン、キャンセルになったんで、帰ってきたんですよ」
坂口はなんにもしてないのに疲れたなんていいながら、もう割り箸を割って食べ始めている。
「そうなんだ。お疲れ様。どこかにそのまま食べに行かなかったの?」
まりあもそうたずねながらペットボトルのお茶に口をつける。
「今日はどうしても田村屋のラーメンが食べたい気分だったんですよ。で、わざわざ戻ってきて行ったのに臨時休業で閉まってて。仕方ないから弁当にしたんです。ちょい萎えました」
「あー、なるほどね」
ペットボトルの蓋を締めながらまりあはうんうんと頷く。
「それより」
「ん? これ食べたい?」
取り出していたシメのおやつ、受験生が“キット勝つ”と験を担いで食べるチョコレート菓子の袋をつまんで坂口をみせると、彼は苦笑して首を振った。
「いや、今はいいっす。でも貰います」
「あ、貰うのは貰うのね」
笑いながらひと袋彼に渡してから、自分もあけてぽりっと齧る。
「また話を逸らされそうになった」
横で坂口が苦笑混じりにぼそりと呟いたのが聞こえて、まりあはえ? と顔をあげると今度はびたりと視線を合わされ早口で言われた。
「それより! 飲み会があったら教えてくれるって言ってた話があったじゃないですか。あれ、今教えて下さい」
「でもこんなことをいくら妄想しても、妄想でしかないしなあ」
ため息混じりにそう呟いた時だった。
「何を妄想してんすか?」
背後からいきなり声をかけられて、まりあはベンチから数センチ飛び上がらんばかりに驚いた。振り向くと、上着とコンビニの袋を手に持ったワイシャツ姿の坂口が、面白そうにまりあを見ていた。
「相変わらず百面相して独り言全開ですね」
クスクス笑いながら隣いいですか、といいながらさっさと座ってしまう坂口にまりあは苦笑するしかない。
「ひどい言い方。独り言は否定しないけど百面相なんてしてないよ。それより今日一日外出って予定表にあった気がしたけど」
プラスチックの袋から大きな弁当を取り出した坂口の横顔を見ながらまりあがたずねた。
「午後に予定していた競合代理店へのプレゼン、キャンセルになったんで、帰ってきたんですよ」
坂口はなんにもしてないのに疲れたなんていいながら、もう割り箸を割って食べ始めている。
「そうなんだ。お疲れ様。どこかにそのまま食べに行かなかったの?」
まりあもそうたずねながらペットボトルのお茶に口をつける。
「今日はどうしても田村屋のラーメンが食べたい気分だったんですよ。で、わざわざ戻ってきて行ったのに臨時休業で閉まってて。仕方ないから弁当にしたんです。ちょい萎えました」
「あー、なるほどね」
ペットボトルの蓋を締めながらまりあはうんうんと頷く。
「それより」
「ん? これ食べたい?」
取り出していたシメのおやつ、受験生が“キット勝つ”と験を担いで食べるチョコレート菓子の袋をつまんで坂口をみせると、彼は苦笑して首を振った。
「いや、今はいいっす。でも貰います」
「あ、貰うのは貰うのね」
笑いながらひと袋彼に渡してから、自分もあけてぽりっと齧る。
「また話を逸らされそうになった」
横で坂口が苦笑混じりにぼそりと呟いたのが聞こえて、まりあはえ? と顔をあげると今度はびたりと視線を合わされ早口で言われた。
「それより! 飲み会があったら教えてくれるって言ってた話があったじゃないですか。あれ、今教えて下さい」