第126話
文字数 704文字
挨拶もそこそこに逃げ帰るような形になってしまったラリュールからの帰り道を思い出す。つり革につかまって電車に揺られていたら、後悔の念が、まりあの心のなかにジワジワと湧き上がってきた。
地下鉄の窓に映るまりあは、以前より圧倒的に垢抜けてみえた。この髪型はどう考えても上茶谷からまりあへ、心のこもったプレゼントだった。ここまで丁寧に似合う髪型を考えてくれた人が、まりあの事が嫌いで添い寝を拒絶するわけがない。
あの拒否は坂口と仲良くやりなさいという叱咤激励の意味を込めたメッセージなのかもしれない。時には厳しくけれどやっぱり優しい
そう考えたらいてもたってもいられなくなった。そんな人と気まずい関係にだけはなりたくない。だからまりあは芸能人を出待ちするファンのように、寝るまでの準備を万端にしてから玄関先に座りこんで待機、上茶谷が階段を登る音が聞こえたところで、頃合いをみてドアをあけ声をかけた。せめて以前のように仲良くしていきたい。その一心だった。それがなぜかこうしてまた、彼と添い寝することになっている。
(どうして、ダイゴさん添い寝に誘ってきたんだろ……)
以前と変わらずラベンダーの香りがする寝室は、心を鎮めてくれるはずなのにまりあの心は逆に昂ってしまう。ただ座っているだけなのにまるで軽く走っているような心拍数。そんな鼓動が緊張を主張するように、まりあの胸を叩いてくる。
その胸のあたりに手を置いて、落ち着こうと何度目かの深呼吸したちょうどその時、寝室のドアが不意に開いたから、まりあは“ひっ!”とさけんで腰を浮かせてしまった。
地下鉄の窓に映るまりあは、以前より圧倒的に垢抜けてみえた。この髪型はどう考えても上茶谷からまりあへ、心のこもったプレゼントだった。ここまで丁寧に似合う髪型を考えてくれた人が、まりあの事が嫌いで添い寝を拒絶するわけがない。
あの拒否は坂口と仲良くやりなさいという叱咤激励の意味を込めたメッセージなのかもしれない。時には厳しくけれどやっぱり優しい
姉
のように思ってくれている上茶谷なら、そうにちがいないとまりあは確信すらした。そう考えたらいてもたってもいられなくなった。そんな人と気まずい関係にだけはなりたくない。だからまりあは芸能人を出待ちするファンのように、寝るまでの準備を万端にしてから玄関先に座りこんで待機、上茶谷が階段を登る音が聞こえたところで、頃合いをみてドアをあけ声をかけた。せめて以前のように仲良くしていきたい。その一心だった。それがなぜかこうしてまた、彼と添い寝することになっている。
(どうして、ダイゴさん添い寝に誘ってきたんだろ……)
以前と変わらずラベンダーの香りがする寝室は、心を鎮めてくれるはずなのにまりあの心は逆に昂ってしまう。ただ座っているだけなのにまるで軽く走っているような心拍数。そんな鼓動が緊張を主張するように、まりあの胸を叩いてくる。
その胸のあたりに手を置いて、落ち着こうと何度目かの深呼吸したちょうどその時、寝室のドアが不意に開いたから、まりあは“ひっ!”とさけんで腰を浮かせてしまった。