第161話
文字数 625文字
「そいつアメフト部の後輩だったんです。卒業まじかになって、清水の舞台から飛び降りるみたいな真っ青な顔をして告ってきたんですけど、手とかめちゃくちゃ震えてましたからね」
坂口が過去を思い出すように目を細めた。
「相当な覚悟だったんだと思います。十年位前の話だから今ほどオープンな空気はなくて。当時同性愛をカミングアウトして、まわりに言いふらされて自殺に追い込まれたって大学生もいましたから。告白するなんてとんでもない勇気が必要だったと思います。俺はそっちの趣味は皆無だからって断りましたけど、彼の真剣さが心に刺さったんで色々話をしたんですよ。その時ヤツが言っていたことがすごく印象に残っていて。最後にこういって笑ったんです」
顔をあげて、まりあを見つめる坂口の瞳は真剣だった。
「……自分は男しか好きになれない。多分一生って」
まりあはなにも言葉を発することができない。ただ彼を見つめるだけだ。坂口はそこで息をついてから言葉を繋ぐ。
「場合によって、男を好きになったり女を好きになったりとか。そういうふうに、スイッチできる人もいるかもしれません。でもあの人はおそらく、……男しか愛せない人なんじゃないですか?」
まりあはしばらく坂口の顔を見つめたあと、何か身体の奥で、ピンと張り詰めていた糸がブツンと切れる音が聞こえた気がした。
「い、い、板野さん! す、すいません! だ、大丈夫ですか?」
坂口がひどく慌てた様子でいるからまりあのほうがびっくりしてしまう。
坂口が過去を思い出すように目を細めた。
「相当な覚悟だったんだと思います。十年位前の話だから今ほどオープンな空気はなくて。当時同性愛をカミングアウトして、まわりに言いふらされて自殺に追い込まれたって大学生もいましたから。告白するなんてとんでもない勇気が必要だったと思います。俺はそっちの趣味は皆無だからって断りましたけど、彼の真剣さが心に刺さったんで色々話をしたんですよ。その時ヤツが言っていたことがすごく印象に残っていて。最後にこういって笑ったんです」
顔をあげて、まりあを見つめる坂口の瞳は真剣だった。
「……自分は男しか好きになれない。多分一生って」
まりあはなにも言葉を発することができない。ただ彼を見つめるだけだ。坂口はそこで息をついてから言葉を繋ぐ。
「場合によって、男を好きになったり女を好きになったりとか。そういうふうに、スイッチできる人もいるかもしれません。でもあの人はおそらく、……男しか愛せない人なんじゃないですか?」
まりあはしばらく坂口の顔を見つめたあと、何か身体の奥で、ピンと張り詰めていた糸がブツンと切れる音が聞こえた気がした。
「い、い、板野さん! す、すいません! だ、大丈夫ですか?」
坂口がひどく慌てた様子でいるからまりあのほうがびっくりしてしまう。