第47話
文字数 728文字
第一印象は、まりあをまるごと飲み込もうとしている野生動物だ。そんなをイメージ抱かせる大柄な金髪の男がまりあをじっと見ていた。思わず小さくひっと呻いてしまった。まりあがさらに声をあげようとしたその瞬間を見計らったように、その男は硬い表情を崩して、世慣れた人がよくやる感じのいい笑顔をするりと浮かべてみせた。
『女の子だったんだ。隣のちんちく……』
『蒼佑 、一体なんの用?』
男の声に被せるようにクールな上茶谷の声が空気を震わせた。
『ああ』
蒼佑と呼ばれた男は微笑んだまま手にもっていた紙袋を掲げてみせた。
『今日、お前の店にいったときに渡そうと思っていたのに、うっかり持っていくの忘れちゃってさ。実家に帰省したついでにおやき、買ってきたんだ。大悟、好きだったろ』
そういって紙袋を差し出したが、上茶谷はその袋をじっとみつめたままひとつ吐息をついた。
『それはわざわざありがとう。でもこんなに一人じゃ食べられないわ』
じっとおやきの袋を見ていた上茶谷が突然振り返った。
『まりあ、半分食べない?』
『へ?!』
はりつめた空気のなか、いきなり自分の名前がでてきて、まりあは飛び上がりそうになった。
『い、いやー。おやき嫌いじゃないですけど……』
恐る恐るふたりの顔を見比べる。ふたりともかなりシリアスな表情をしていて安易に答えられない雰囲気があった。
『じゃ、いいじゃない。半分こしましょう。そのマドレーヌも半分こ。そっちもひとりでたべられないわよ』
黙ってやり取りを聞いていた金髪男が不意に口を挟んだ。
『お店のスタッフにあげればよくない?』
静かな声なのに微かに尖った気配を感じてまりあは出かかった言葉を飲み込む。けれど上茶谷は全く動じる様子もなく、男にすっと視線を向けた。
『女の子だったんだ。隣のちんちく……』
『
男の声に被せるようにクールな上茶谷の声が空気を震わせた。
『ああ』
蒼佑と呼ばれた男は微笑んだまま手にもっていた紙袋を掲げてみせた。
『今日、お前の店にいったときに渡そうと思っていたのに、うっかり持っていくの忘れちゃってさ。実家に帰省したついでにおやき、買ってきたんだ。大悟、好きだったろ』
そういって紙袋を差し出したが、上茶谷はその袋をじっとみつめたままひとつ吐息をついた。
『それはわざわざありがとう。でもこんなに一人じゃ食べられないわ』
じっとおやきの袋を見ていた上茶谷が突然振り返った。
『まりあ、半分食べない?』
『へ?!』
はりつめた空気のなか、いきなり自分の名前がでてきて、まりあは飛び上がりそうになった。
『い、いやー。おやき嫌いじゃないですけど……』
恐る恐るふたりの顔を見比べる。ふたりともかなりシリアスな表情をしていて安易に答えられない雰囲気があった。
『じゃ、いいじゃない。半分こしましょう。そのマドレーヌも半分こ。そっちもひとりでたべられないわよ』
黙ってやり取りを聞いていた金髪男が不意に口を挟んだ。
『お店のスタッフにあげればよくない?』
静かな声なのに微かに尖った気配を感じてまりあは出かかった言葉を飲み込む。けれど上茶谷は全く動じる様子もなく、男にすっと視線を向けた。