第110話
文字数 611文字
止まった時間を断ち切るように上茶谷がにっこりと微笑んだ。
「良かったじゃない。もう返事したの?」
そういって微笑む上茶谷をまりあは数秒見つめた。自分は彼にとって特別な存在。そう思わせてくれていた魔法が解けてしまった感覚にほんのり火照っていた心がクールダウンしていく。坂口と試しに付き合ってみたらいい。そう上茶谷が言っていたことを思いだす。彼にとってはちょっと興味のある話題でしかないのだ。ううん違う、とまりあは心のなかですぐに否定する。上茶谷は心配してくれているのだ。三十を過ぎて彼氏がいない自分をまるで姉のように。もしくは年上の友達として。まりあは静かに首を振って微笑んだ。
「いえ、まだです。すぐには答えられないっていいましたから」
上茶谷は笑顔を緩めてそっと目を細めた。
「……どうして? 確かにちょっと生意気そうだけどよさそうな人じゃない」
上茶谷の言葉にまりあは小さく笑ってしまう。
「そうなんです。生意気なんですけどすごくいい男なんです。私には勿体ないくらいの。でも……」
「でも? ……彼のことがすきだって言ってた女の子がいるから?」
まりあは小さく首を振る。
「それだけじゃなくて……」
そのまま上茶谷を見つめる。うまく言葉にならないその気持ちだけが空回りして苦しい。上茶谷はまりあの表情をみて瞳を見開く。まるでまりあの考えている事がダイレクトに伝わってしまったようだった。上茶谷がゆっくりと口を開いたその時だった。
「良かったじゃない。もう返事したの?」
そういって微笑む上茶谷をまりあは数秒見つめた。自分は彼にとって特別な存在。そう思わせてくれていた魔法が解けてしまった感覚にほんのり火照っていた心がクールダウンしていく。坂口と試しに付き合ってみたらいい。そう上茶谷が言っていたことを思いだす。彼にとってはちょっと興味のある話題でしかないのだ。ううん違う、とまりあは心のなかですぐに否定する。上茶谷は心配してくれているのだ。三十を過ぎて彼氏がいない自分をまるで姉のように。もしくは年上の友達として。まりあは静かに首を振って微笑んだ。
「いえ、まだです。すぐには答えられないっていいましたから」
上茶谷は笑顔を緩めてそっと目を細めた。
「……どうして? 確かにちょっと生意気そうだけどよさそうな人じゃない」
上茶谷の言葉にまりあは小さく笑ってしまう。
「そうなんです。生意気なんですけどすごくいい男なんです。私には勿体ないくらいの。でも……」
「でも? ……彼のことがすきだって言ってた女の子がいるから?」
まりあは小さく首を振る。
「それだけじゃなくて……」
そのまま上茶谷を見つめる。うまく言葉にならないその気持ちだけが空回りして苦しい。上茶谷はまりあの表情をみて瞳を見開く。まるでまりあの考えている事がダイレクトに伝わってしまったようだった。上茶谷がゆっくりと口を開いたその時だった。