第65話
文字数 635文字
「どうしたの?」
まりあは上茶谷の顔をじっと見つめそれから小さく首を傾げて笑った。
「……いえ、なんでもないです」
何を思ったのか聞いてみたい気もしたけれど、なにかを話そうとしているまりあを見て上茶谷は次の言葉を促すように頷く。まりあも言葉を選ぶようにしながら話を続けた。
「それで、話が戻るんですけどナナちゃん……あ、その彼のことを好きな女の子ですけど、ナナちゃんはひたむきに坂口くんのことを想っているんです。そういうコが彼を好きだといっているのに、わたしが坂口くんと軽い気持ちで付き合ってみるっていうのはやっぱり違う気がするんです」
そこまでまりあは言うと五本目のビールを一気に飲み、はあと吐息をついてはずかしそうに笑った。
「でもわたし、告白もされてないのにこんな話をしちゃってるのおかしいですよね。盛大な勘違いだったら、独りよがりも甚だしくて恥ずかしすぎる」
そこで上茶谷もつい笑ってしまう。
「そうね。でももし盛大な勘違いだったら、思いっきり笑ってあげるから気にしなくていいわよ」
目を見合わせてふたりでくすくす笑いあう。
「ねえ、まりあ」
笑いが収まったあと、上茶谷が呼びかける。
「その感覚、わかる気がするわ。恋人と一緒にいても心も身体も冷えていく感じ」
まりあと似たようなことを昔、感じていたことを彼もまた、思い出していた。
「昔、女の子と付き合っている時、そんな感じだったから」
「そう……だったんですか」
すこしとろんとした瞳を見開いて、まりあが驚いたように呟いた。
まりあは上茶谷の顔をじっと見つめそれから小さく首を傾げて笑った。
「……いえ、なんでもないです」
何を思ったのか聞いてみたい気もしたけれど、なにかを話そうとしているまりあを見て上茶谷は次の言葉を促すように頷く。まりあも言葉を選ぶようにしながら話を続けた。
「それで、話が戻るんですけどナナちゃん……あ、その彼のことを好きな女の子ですけど、ナナちゃんはひたむきに坂口くんのことを想っているんです。そういうコが彼を好きだといっているのに、わたしが坂口くんと軽い気持ちで付き合ってみるっていうのはやっぱり違う気がするんです」
そこまでまりあは言うと五本目のビールを一気に飲み、はあと吐息をついてはずかしそうに笑った。
「でもわたし、告白もされてないのにこんな話をしちゃってるのおかしいですよね。盛大な勘違いだったら、独りよがりも甚だしくて恥ずかしすぎる」
そこで上茶谷もつい笑ってしまう。
「そうね。でももし盛大な勘違いだったら、思いっきり笑ってあげるから気にしなくていいわよ」
目を見合わせてふたりでくすくす笑いあう。
「ねえ、まりあ」
笑いが収まったあと、上茶谷が呼びかける。
「その感覚、わかる気がするわ。恋人と一緒にいても心も身体も冷えていく感じ」
まりあと似たようなことを昔、感じていたことを彼もまた、思い出していた。
「昔、女の子と付き合っている時、そんな感じだったから」
「そう……だったんですか」
すこしとろんとした瞳を見開いて、まりあが驚いたように呟いた。