第20話
文字数 885文字
「へ?」
それは仕事に関してのことなのか、それとも個人的に彼のことをどう思っているかということなのか。まりあは首を傾げたあと口を開く。
「坂口くん? そうだね。口が悪いのは玉に瑕だけど仕事できるし、顔だってそこそこイケメンだし。いいんじゃないかな」
当たり障りのない範囲でまりあがそういってみると、ナナがそこそこイケメンはウケるといってふきだした。それでも聞きたかったことは
「坂口さんのこと、男としてどー見てるかってことですー」
真昼間の職場、しかも業務中に坂口の男っぷりについてどう思うか説明しろと言われても、答えるのが難しい。
「いや、男って言われてもなあ。そうだなあ。頼りになる後輩くんかな」
まりあは考えながらそういうと、ナナはしばらくじいっとまりあの顔を見つめたあと、にっこり笑った。
「そっか。そうですよねー。後輩ですもんね。すいません、仕事中にへんなこと聞いちゃって。坂口さんと板野さん、仲がいいなあって思ったから。もしかしてつきあっていたりするのかなとか思ったんですー」
パチパチといつもより多く瞬きしているナナをまりあはびっくりして見つめた。
「まさか。つきあってないよ。……ナナちゃんもしかして坂口くんのこと、好きなの?」
ここまで言われたら、いくら鈍感なまりあでも気づかない訳にはいかない。
「あー、いやー、そのー、あの、なんていうか、あー、簡単にいってしまうと、そうかもしれないですー」
いつもは歯切れのいいナナが、この時ばかりはどこかの政治家のようにどもり始めてまりあは思わず笑ってしまう。派手にみえるし、恋愛にも慣れていそうなナナの初々しい反応を見つめる。微笑ましいという気持ちと、そんな感覚をどこかに置き忘れたまま自分は歳をとってしまうことへの寂しさと怖さと。それらがまりあの心のなかで入り混じっている。
(恋愛なんてもうしなくてもいい。大丈夫って思っていたはずなのに)
穴に落ちてそこからみえる綺麗な空をぼんやり眺めている気分になり、あえて明るく言葉を繋いだ。
それは仕事に関してのことなのか、それとも個人的に彼のことをどう思っているかということなのか。まりあは首を傾げたあと口を開く。
「坂口くん? そうだね。口が悪いのは玉に瑕だけど仕事できるし、顔だってそこそこイケメンだし。いいんじゃないかな」
当たり障りのない範囲でまりあがそういってみると、ナナがそこそこイケメンはウケるといってふきだした。それでも聞きたかったことは
ソコ
じゃなかったらしく、いやそうじゃなくてですねー、とまた語尾を伸ばしながらたずねてきた。「坂口さんのこと、男としてどー見てるかってことですー」
真昼間の職場、しかも業務中に坂口の男っぷりについてどう思うか説明しろと言われても、答えるのが難しい。
「いや、男って言われてもなあ。そうだなあ。頼りになる後輩くんかな」
まりあは考えながらそういうと、ナナはしばらくじいっとまりあの顔を見つめたあと、にっこり笑った。
「そっか。そうですよねー。後輩ですもんね。すいません、仕事中にへんなこと聞いちゃって。坂口さんと板野さん、仲がいいなあって思ったから。もしかしてつきあっていたりするのかなとか思ったんですー」
パチパチといつもより多く瞬きしているナナをまりあはびっくりして見つめた。
「まさか。つきあってないよ。……ナナちゃんもしかして坂口くんのこと、好きなの?」
ここまで言われたら、いくら鈍感なまりあでも気づかない訳にはいかない。
「あー、いやー、そのー、あの、なんていうか、あー、簡単にいってしまうと、そうかもしれないですー」
いつもは歯切れのいいナナが、この時ばかりはどこかの政治家のようにどもり始めてまりあは思わず笑ってしまう。派手にみえるし、恋愛にも慣れていそうなナナの初々しい反応を見つめる。微笑ましいという気持ちと、そんな感覚をどこかに置き忘れたまま自分は歳をとってしまうことへの寂しさと怖さと。それらがまりあの心のなかで入り混じっている。
(恋愛なんてもうしなくてもいい。大丈夫って思っていたはずなのに)
穴に落ちてそこからみえる綺麗な空をぼんやり眺めている気分になり、あえて明るく言葉を繋いだ。