第96話
文字数 688文字
上島は一瞬息を飲むような素振りをみせたものの表情は変えずにゆっくり頷いた。
「……そうだよな。あんな別れ方をした人間、信用できないだろうし今更ナニ言ってんだって話だと思う。でも俺は大悟と別れたあと嫌というほど自分の愚かさを痛感して」
そこまで彼が言ったところで上島は新宿出口へつながる急な坂道へと車線変更をする。踏み込んだエンジンが唸り急勾配の坂をストレスもなく一気に駆けあがる。料金所を通り抜けるとくねった下り坂になり、高層ビルの谷間のような広い下道に車が吐き出されたところで、路肩に車をつけ車を停めた。通奏低音のように響いていたエンジンが止まり、代わりにハザードランプがチカチカと車内も照らす。上島がふうとひとつ吐息を吐いてから上茶谷に視線を移した。
「もう同じ過ちは繰り返さないときめたんだ。だから、……俺が言った事が本気だってことを証明させてほしい。大悟が信じてくれるまでこれから何年かかっても証明したい」
上島を見るとこれまであまり見た事がないような真面目な表情をして、じっと上茶谷を見つめていた。お互いの感情がハザードランプと一緒に点滅するような時間がすぎる。上茶谷は小さくため息をついた後、沈黙した車内に言葉を落とした。
「共同経営の話はもう少し考えさせて。ただ……蒼佑とヨリを戻すとかそういうことは考えられない。もしあなたがそれでは納得できない。そういうことならこの話は白紙してください」
上茶谷は視線を逸らさず言い切った。上島はしばらくそのまま上茶谷の顔を見つめていたけれど、張り詰めた空気を自ら壊すように声をだして笑った。子供みたいな無邪気な笑いだった。
「……そうだよな。あんな別れ方をした人間、信用できないだろうし今更ナニ言ってんだって話だと思う。でも俺は大悟と別れたあと嫌というほど自分の愚かさを痛感して」
そこまで彼が言ったところで上島は新宿出口へつながる急な坂道へと車線変更をする。踏み込んだエンジンが唸り急勾配の坂をストレスもなく一気に駆けあがる。料金所を通り抜けるとくねった下り坂になり、高層ビルの谷間のような広い下道に車が吐き出されたところで、路肩に車をつけ車を停めた。通奏低音のように響いていたエンジンが止まり、代わりにハザードランプがチカチカと車内も照らす。上島がふうとひとつ吐息を吐いてから上茶谷に視線を移した。
「もう同じ過ちは繰り返さないときめたんだ。だから、……俺が言った事が本気だってことを証明させてほしい。大悟が信じてくれるまでこれから何年かかっても証明したい」
上島を見るとこれまであまり見た事がないような真面目な表情をして、じっと上茶谷を見つめていた。お互いの感情がハザードランプと一緒に点滅するような時間がすぎる。上茶谷は小さくため息をついた後、沈黙した車内に言葉を落とした。
「共同経営の話はもう少し考えさせて。ただ……蒼佑とヨリを戻すとかそういうことは考えられない。もしあなたがそれでは納得できない。そういうことならこの話は白紙してください」
上茶谷は視線を逸らさず言い切った。上島はしばらくそのまま上茶谷の顔を見つめていたけれど、張り詰めた空気を自ら壊すように声をだして笑った。子供みたいな無邪気な笑いだった。