第49話
文字数 844文字
空気がすこし和んだところで、まりあはペコリと頭を下げた。
『すいません。お話の途中お邪魔しちゃって。それじゃわたし、失礼します』
まりあがそういうと金髪男はにっこり愛想良く笑った。
『またね。ちんちく……じゃなくて、まりあちゃん』
(ちんちく?)
さきほどから“ちんちく"と言われていることにまりあのなかでハテナマークが浮かんだものの、追求するほどの知り合いでもないので、そのままドアを閉めた。だからそのあと金髪男と上茶谷がどんな話をしていたのかはわからない。気になって玄関先に立っていたけれど、いくら安っぽいドア越しでもふたりの会話よく聞こえなかった。ぼそぼそとした声が多少聞こえるくらいで、それがしばらく続いたあと、男が階段を降りていく音がしたのだった。
まりあは、ぼぉっと手に持ったままの一かけらになっていたおにぎりを口に放りこんで、咀嚼しながら考える。あの金髪男は上茶谷とどんな関係で、どんな素性の人なのか。切れ長の瞳はどこか一匹狼みたいな鋭さがあって、金髪じゃなくても、サラリーマンには見えなかっただろう。会社という牧 で飼われ、草を食み生きているまりあは一発で捕獲され餌食にされそうだ。
ギラギラとした空気を纏ってあからさまに危険な感じがするわけでもない。けれどいざという時は懐に忍ばせているナイフを使うことを躊躇しない。そんな冷たさも感じさせた。それでいて優しい時はどこまでも相手を甘やかしそうなあの笑顔だ。つまり一度深みにハマってしまったら、ズブズブと引きずりこまれてしまう沼タイプの男じゃないかと、まりあは予想して首を竦めた。
そんな男と上茶谷のあの雰囲気は一体どういうことだろう。どこかキリキリと痛くなるような空気が漂っていた。お互いに彼らは名前で呼び合っていたから、親密な仲ではあるのは間違いない。
(恋人どうし、とか?)
パッとみてもあの二人は絵になっていた。スラリとして線が細い美形の上茶谷と、長身で鍛えられたひと特有の締まった身体に、塩顔をつけた金髪男の図を思い出す。
『すいません。お話の途中お邪魔しちゃって。それじゃわたし、失礼します』
まりあがそういうと金髪男はにっこり愛想良く笑った。
『またね。ちんちく……じゃなくて、まりあちゃん』
(ちんちく?)
さきほどから“ちんちく"と言われていることにまりあのなかでハテナマークが浮かんだものの、追求するほどの知り合いでもないので、そのままドアを閉めた。だからそのあと金髪男と上茶谷がどんな話をしていたのかはわからない。気になって玄関先に立っていたけれど、いくら安っぽいドア越しでもふたりの会話よく聞こえなかった。ぼそぼそとした声が多少聞こえるくらいで、それがしばらく続いたあと、男が階段を降りていく音がしたのだった。
まりあは、ぼぉっと手に持ったままの一かけらになっていたおにぎりを口に放りこんで、咀嚼しながら考える。あの金髪男は上茶谷とどんな関係で、どんな素性の人なのか。切れ長の瞳はどこか一匹狼みたいな鋭さがあって、金髪じゃなくても、サラリーマンには見えなかっただろう。会社という
ギラギラとした空気を纏ってあからさまに危険な感じがするわけでもない。けれどいざという時は懐に忍ばせているナイフを使うことを躊躇しない。そんな冷たさも感じさせた。それでいて優しい時はどこまでも相手を甘やかしそうなあの笑顔だ。つまり一度深みにハマってしまったら、ズブズブと引きずりこまれてしまう沼タイプの男じゃないかと、まりあは予想して首を竦めた。
そんな男と上茶谷のあの雰囲気は一体どういうことだろう。どこかキリキリと痛くなるような空気が漂っていた。お互いに彼らは名前で呼び合っていたから、親密な仲ではあるのは間違いない。
(恋人どうし、とか?)
パッとみてもあの二人は絵になっていた。スラリとして線が細い美形の上茶谷と、長身で鍛えられたひと特有の締まった身体に、塩顔をつけた金髪男の図を思い出す。