第186話
文字数 639文字
女の子の柔らかくて頼りないフワフワした感触は好きではなかった。力をこめて抱きしめたら、壊してしまいそうで落ち着かなくなるから。けれどまりあは、上茶谷にそんな不安をもたらすことはなかった。
彼女も小さくて柔らかい。けれど不思議と壊れそうな脆さはなくて。どこまでも上茶谷の腕に馴染んだ。さらには遠赤外線みたいなオーラがでていて、傍にいると陽だまりの中にいるみたいにポカポカし、むしろ心が落ち着いたのだ。それは睡眠導入剤なんて比べ物にならないほど、上茶谷を眠りに導くチカラもあった。他人と一緒に寝て、あれほど深く心地よく眠れたことはなかった。
朝早く目が覚めて、ふと隣で寝ているまりあをみたら、色気とは対極にある幼い子どもみたいだった。ぽかんと口を開けた無邪気な寝顔に笑いがこみあげてきてついぎゅっと抱きしめた。そうしてまりあの体温と香りに包まれていたら、また眠くなってしまいウトウトしてしまった。そんなことを思い出していたら口元が勝手にほころんでしまう。上茶谷はゆっくりと目を閉じる。
さきほどアパートに帰ってきたときまりあは飼い主の帰りを待ちわびていたワンコのように、嬉しそうに飛びだしてきた。玄関先で彼をずっと待っていたのだろう。彼女と距離を置こうとする上茶谷に、口をとがらせて文句をいう顔も、泣きべそをかいて部屋に戻っていくしょんぼりした後ろ姿も、容赦なく瞼の裏にうかんでくる。
ひたむきな好意を寄せてくれる愛すべき存在。そんな人間を上茶谷は自ら、遠ざけようとしているのだ。
彼女も小さくて柔らかい。けれど不思議と壊れそうな脆さはなくて。どこまでも上茶谷の腕に馴染んだ。さらには遠赤外線みたいなオーラがでていて、傍にいると陽だまりの中にいるみたいにポカポカし、むしろ心が落ち着いたのだ。それは睡眠導入剤なんて比べ物にならないほど、上茶谷を眠りに導くチカラもあった。他人と一緒に寝て、あれほど深く心地よく眠れたことはなかった。
朝早く目が覚めて、ふと隣で寝ているまりあをみたら、色気とは対極にある幼い子どもみたいだった。ぽかんと口を開けた無邪気な寝顔に笑いがこみあげてきてついぎゅっと抱きしめた。そうしてまりあの体温と香りに包まれていたら、また眠くなってしまいウトウトしてしまった。そんなことを思い出していたら口元が勝手にほころんでしまう。上茶谷はゆっくりと目を閉じる。
さきほどアパートに帰ってきたときまりあは飼い主の帰りを待ちわびていたワンコのように、嬉しそうに飛びだしてきた。玄関先で彼をずっと待っていたのだろう。彼女と距離を置こうとする上茶谷に、口をとがらせて文句をいう顔も、泣きべそをかいて部屋に戻っていくしょんぼりした後ろ姿も、容赦なく瞼の裏にうかんでくる。
ひたむきな好意を寄せてくれる愛すべき存在。そんな人間を上茶谷は自ら、遠ざけようとしているのだ。