第67話
文字数 873文字
まりあはとろんとした意識の中で微睡 んでいた。なんだかいい香りがして、暖かくて優しいものに包 まれている。もっとここにいたい。だけどずっとこのままではいけないと警告してくる感覚もあって意識レベルが一段上がった。
(あれ。わたしどこにいるんだっけ。えーとえーと。ダイゴさんと一緒に餃子とビールをガンガン食べて飲んで。それから……? そもそも今日何曜日?……火曜日! 会社いかなきゃ! 今何時?)
パチリと目が開いた。そして何に包まれているのかハッキリわかった。上茶谷に抱きしめられて寝ていたのだ。
「……!」
びっくりし過ぎると声がでないということをまりあは初めて知った。いまだかつてない至近距離からみる上茶谷の寝顔の破壊力もすごかった。普段は髪の毛に隠されているから、知らなかった形のいい額。整えているようにはみえないのにキレイなカーブを描いている眉。その下ににある閉じられた切れ長の瞳を縁取る長いまつ毛。すっと高い鼻梁から口元のラインにつながる造形は、もはや芸術的だといっていい。少しづつ落ち着きを取り戻してきたまりあは、上茶谷が寝ているのをいいことにじぃっと見てしまう。そして考える。こうして抱きしめられていても、やっぱり嫌な感じが全くしない。それどころかここから出て行きたくないと思ってしまっている自分がいる。
朝起きたらこういう状況になっていることは過去に何度もあった。相手は皆、つきあっていた彼氏だ。その時はそっと腕を外して離れため息をついて、もうひと眠りしていたくらいなのに。彼氏でもなんでもない隣人、上茶谷にはくっついていたいと感じている。これはもう、まりあにとって衝撃的な出来事だといっていい。
(やっぱりダイゴさんなら大丈夫なんだ。でも今はとにかく会社に行かないと)
首だけまわしベッドのヘッドボードに置いてある目覚まし時計を見る。六時十五分。今起きればシャワーを浴びる時間もある。髪の毛は洗いたい。でもこのままこうしていたい。どのタイミングで起きるか。まりあがモジモジしながら逡巡していると、目の前にある切れ長の瞳がうっすらと開いた。
(あれ。わたしどこにいるんだっけ。えーとえーと。ダイゴさんと一緒に餃子とビールをガンガン食べて飲んで。それから……? そもそも今日何曜日?……火曜日! 会社いかなきゃ! 今何時?)
パチリと目が開いた。そして何に包まれているのかハッキリわかった。上茶谷に抱きしめられて寝ていたのだ。
「……!」
びっくりし過ぎると声がでないということをまりあは初めて知った。いまだかつてない至近距離からみる上茶谷の寝顔の破壊力もすごかった。普段は髪の毛に隠されているから、知らなかった形のいい額。整えているようにはみえないのにキレイなカーブを描いている眉。その下ににある閉じられた切れ長の瞳を縁取る長いまつ毛。すっと高い鼻梁から口元のラインにつながる造形は、もはや芸術的だといっていい。少しづつ落ち着きを取り戻してきたまりあは、上茶谷が寝ているのをいいことにじぃっと見てしまう。そして考える。こうして抱きしめられていても、やっぱり嫌な感じが全くしない。それどころかここから出て行きたくないと思ってしまっている自分がいる。
朝起きたらこういう状況になっていることは過去に何度もあった。相手は皆、つきあっていた彼氏だ。その時はそっと腕を外して離れため息をついて、もうひと眠りしていたくらいなのに。彼氏でもなんでもない隣人、上茶谷にはくっついていたいと感じている。これはもう、まりあにとって衝撃的な出来事だといっていい。
(やっぱりダイゴさんなら大丈夫なんだ。でも今はとにかく会社に行かないと)
首だけまわしベッドのヘッドボードに置いてある目覚まし時計を見る。六時十五分。今起きればシャワーを浴びる時間もある。髪の毛は洗いたい。でもこのままこうしていたい。どのタイミングで起きるか。まりあがモジモジしながら逡巡していると、目の前にある切れ長の瞳がうっすらと開いた。