第189話
文字数 684文字
会社から少し歩いた大通りに面したコンビニの前。そこでまりあはビルの隙間から見える空をじっとみていた。蒸し暑い夏の夕暮れ時。紫色から濃い群青色へと移り変わっていく空を眺めていると、ちっぽけな自分の悩みなんて大したことなんかない。そんな気持ちになってくるから不思議だ。
「大丈夫……わたしはちゃんとゲンキ」
まりあは小さく口ずさんでみる。さきほどトイレの鏡で確認したら目がまだ少し腫れぼったい気もした。三十も過ぎて幼稚園児もびっくりするような勢いで泣きはらしてしまったとまりあは苦笑する。
仕事を早めに切り上げまりあは上島と待ち合わせをしていた。普通ならこんな最悪な顔のコンディションで人に会いたくない。しかも相手は上島だ。けれどまりあはどうとでもなれ、というような気持ちだった。それは投げやりというよりは開き直りだった。一晩泣いてスッキリして。気持ちの収拾がつかない状態だった昨晩よりも、今の方が心のコンディションは全然マシだとまりあは思う。
昼休みに思い切って上島に電話したところ、社長業で忙しいだろうに彼は二コールで出てきた。まりあはどこか緊張してスマホを握りしめていたけれど、電話にでた上島はやっぱりかけてくるって思ってたよ、なんて軽い口調でいってきたから緊張なんかすぐに飛んでいってしまった。代わりにわきあがってきたのは対抗心だった。
『名刺拝見いたしました。……ご要件はなんですか』
我ながらながら感じが悪い応対だと思ってまりあは少し後悔してしまった。けれど上島は気にする様子もなく機嫌よく答えた。
『ふたりだけで話をしてみたかったんだよね。まりあちゃんは嫌?』
「大丈夫……わたしはちゃんとゲンキ」
まりあは小さく口ずさんでみる。さきほどトイレの鏡で確認したら目がまだ少し腫れぼったい気もした。三十も過ぎて幼稚園児もびっくりするような勢いで泣きはらしてしまったとまりあは苦笑する。
仕事を早めに切り上げまりあは上島と待ち合わせをしていた。普通ならこんな最悪な顔のコンディションで人に会いたくない。しかも相手は上島だ。けれどまりあはどうとでもなれ、というような気持ちだった。それは投げやりというよりは開き直りだった。一晩泣いてスッキリして。気持ちの収拾がつかない状態だった昨晩よりも、今の方が心のコンディションは全然マシだとまりあは思う。
昼休みに思い切って上島に電話したところ、社長業で忙しいだろうに彼は二コールで出てきた。まりあはどこか緊張してスマホを握りしめていたけれど、電話にでた上島はやっぱりかけてくるって思ってたよ、なんて軽い口調でいってきたから緊張なんかすぐに飛んでいってしまった。代わりにわきあがってきたのは対抗心だった。
『名刺拝見いたしました。……ご要件はなんですか』
我ながらながら感じが悪い応対だと思ってまりあは少し後悔してしまった。けれど上島は気にする様子もなく機嫌よく答えた。
『ふたりだけで話をしてみたかったんだよね。まりあちゃんは嫌?』