第249話
文字数 538文字
上茶谷だからできる愛し方もあるはずだ。それをまりあと試してみたい。あれから上茶谷に対する温度が少しづつ変わっていくまりあを見ていた。彼女にも上茶谷のことを欲しがってほしかった。
そのまりあが夕食を一緒に食べようとおくってきたメッセージ。文章は一行だけ。普段は顔文字などを織り交ぜて長めのメッセージを送ってくる彼女からしたらシンプルすぎる文面だ。それゆえにいつもと違うものを感じた。その一行に
(十八時以降なら仕事も一段落しているから、まりあの都合がいい時間にうちの事務所に来てもらえる? 近くにいいビストロがあるからそこでどう?)
まりあの勤め先から上茶谷の事務所まで近いから、帰りに寄ってもらえれば手っ取り早い。メッセージを送信したところで、大きな声が聞こえてきた。
「上茶谷さーん、すいませーん。ちょっと来てもらっていいですか? あれ、どこいったんだろ」
動画作成を依頼している映像制作会社のディレクターが上茶谷を探しているようだった。上茶谷は苦笑しスマホをポケットにしまうと、声のほうへと歩き出した。
あの熱
が帯びて満ちるのを待っていた。そのまりあが夕食を一緒に食べようとおくってきたメッセージ。文章は一行だけ。普段は顔文字などを織り交ぜて長めのメッセージを送ってくる彼女からしたらシンプルすぎる文面だ。それゆえにいつもと違うものを感じた。その一行に
あの熱
が微かに宿っている。そんな気がした。上茶谷はテキスト入力のカーソルが点滅するのを数秒見つめる。それからひとつ息を吐いて返事を書く。(十八時以降なら仕事も一段落しているから、まりあの都合がいい時間にうちの事務所に来てもらえる? 近くにいいビストロがあるからそこでどう?)
まりあの勤め先から上茶谷の事務所まで近いから、帰りに寄ってもらえれば手っ取り早い。メッセージを送信したところで、大きな声が聞こえてきた。
「上茶谷さーん、すいませーん。ちょっと来てもらっていいですか? あれ、どこいったんだろ」
動画作成を依頼している映像制作会社のディレクターが上茶谷を探しているようだった。上茶谷は苦笑しスマホをポケットにしまうと、声のほうへと歩き出した。