第128話
文字数 629文字
掠れた低い声で上茶谷に呼ばれ、まりあはフラフラと立ち上がり座っている彼の前に立つ。まりあは初めて上から上茶谷を見下ろしたかもしれない。少し濡れた長い前髪の間からまりあを見上げる瞳も表情もやっぱり綺麗で、ひどく官能的だった。それでいてこういう状況で男の人が漂わせる肉体的欲求からくる切迫感は感じられない。
これまでは絡みつくような男性の“欲”を感じたとたん体温が冷えていくのを感じたのに。今は飲んでも飲んでも、乾きが癒されない夢のなかにいるみたいだと感じている。今までにない感覚に戸惑いそれがまりあを動かす。自分からぽんと、上茶谷の胸の中に飛び込む。その勢いで彼をベッドに押し倒したような形になってしまった。
「わ!」
両腕をついて、ベッドに横たわった上茶谷の上に被さる形になって目が合う。しばらく見つめあったあと、自然とふたりの口元がほころぶ。
「押し倒されちゃった」
「押し倒しちゃった」
そういってふたりでくすくす笑うと、微かに張り詰めていた空気がほどける。上茶谷がまりあをそのまま抱きとめて、きつくはないけれど身動きはとれないくらいにきゅっと抱きしめた。まりあも上茶谷の背中に手をまわす。彼の体温とほんのり漂うバスソープの香りがまりあを包み込む。心地よさに吐息をもらして、彼のシャツに顔を押し付けた。この気持ちよさはやはり上茶谷独特のものだと思う。
(……あれ。でも昔、似たような感じがあったかも……?)
まりあは抱き締められている腕の中で目を閉じて考える。
これまでは絡みつくような男性の“欲”を感じたとたん体温が冷えていくのを感じたのに。今は飲んでも飲んでも、乾きが癒されない夢のなかにいるみたいだと感じている。今までにない感覚に戸惑いそれがまりあを動かす。自分からぽんと、上茶谷の胸の中に飛び込む。その勢いで彼をベッドに押し倒したような形になってしまった。
「わ!」
両腕をついて、ベッドに横たわった上茶谷の上に被さる形になって目が合う。しばらく見つめあったあと、自然とふたりの口元がほころぶ。
「押し倒されちゃった」
「押し倒しちゃった」
そういってふたりでくすくす笑うと、微かに張り詰めていた空気がほどける。上茶谷がまりあをそのまま抱きとめて、きつくはないけれど身動きはとれないくらいにきゅっと抱きしめた。まりあも上茶谷の背中に手をまわす。彼の体温とほんのり漂うバスソープの香りがまりあを包み込む。心地よさに吐息をもらして、彼のシャツに顔を押し付けた。この気持ちよさはやはり上茶谷独特のものだと思う。
(……あれ。でも昔、似たような感じがあったかも……?)
まりあは抱き締められている腕の中で目を閉じて考える。