第183話
文字数 644文字
上茶谷が顔を上げると上島は、じっと彼を見つめていた。
「ここから引っ越すって話を俺と一緒に住むってわざと勘違いさせただろ? 彼女、笑おうとしていたけれどほとんど泣いてたみたいな顔をしてたな」
上茶谷はほんの少し眉を寄せ上島から視線を逸らしたけれど、容赦なく上島は追い討ちをかける。
「まりあちゃんのこと泣かせないって言ってたくせに」
からかうような口調ではあるけれど、相変わらずこの男はさりげなく痛いところをついてくる。
「そうね、蒼佑の言うとおり。ごめんなさい、利用するようなことをして。でも……これ以上お互いに辛くなる前に離れた方がいいの。まりあが勘違いするならその方がいいと思ったから」
上島が小さく吐息をついて笑った。
「それが嘘からでたマコトになってくれたら、俺的には有難いけどね。でもどうして引っ越しまでして、彼女と距離を置こうとしたの? 」
上茶谷は顔をあげ正面から上島を見つめた。それから口元を歪めるように微笑んでみせる。
「私には女性は愛せない。蒼佑もそう言っていたでしょ。私があの子の近くにいすぎたら駄目だからよ」
そこまで言って口を閉ざした上茶谷を上島はそれ以上追求せず、しばらく黙ってみつめた。それから止まった空気をゆっくり動かすように静かな声で問いかけた。
「……それで大悟は納得したの?」
顔をあげた上茶谷の視線を上島が捉える。上茶谷はそれをそっとずらすようにして、窓の外へと向けた。
「……別にまりあと縁を切るわけじゃないから。納得もなにも基本的には何も変わらないわ」
「ここから引っ越すって話を俺と一緒に住むってわざと勘違いさせただろ? 彼女、笑おうとしていたけれどほとんど泣いてたみたいな顔をしてたな」
上茶谷はほんの少し眉を寄せ上島から視線を逸らしたけれど、容赦なく上島は追い討ちをかける。
「まりあちゃんのこと泣かせないって言ってたくせに」
からかうような口調ではあるけれど、相変わらずこの男はさりげなく痛いところをついてくる。
「そうね、蒼佑の言うとおり。ごめんなさい、利用するようなことをして。でも……これ以上お互いに辛くなる前に離れた方がいいの。まりあが勘違いするならその方がいいと思ったから」
上島が小さく吐息をついて笑った。
「それが嘘からでたマコトになってくれたら、俺的には有難いけどね。でもどうして引っ越しまでして、彼女と距離を置こうとしたの? 」
上茶谷は顔をあげ正面から上島を見つめた。それから口元を歪めるように微笑んでみせる。
「私には女性は愛せない。蒼佑もそう言っていたでしょ。私があの子の近くにいすぎたら駄目だからよ」
そこまで言って口を閉ざした上茶谷を上島はそれ以上追求せず、しばらく黙ってみつめた。それから止まった空気をゆっくり動かすように静かな声で問いかけた。
「……それで大悟は納得したの?」
顔をあげた上茶谷の視線を上島が捉える。上茶谷はそれをそっとずらすようにして、窓の外へと向けた。
「……別にまりあと縁を切るわけじゃないから。納得もなにも基本的には何も変わらないわ」