第125話
文字数 704文字
上茶谷の寝室を占拠している広いダブルベッド。その端にちょこんと座って、まりあはシャワーを浴びている上茶谷を待っていた。
(な、なんだかこれって彼氏を待っているみたいなシチュエーションでは……)
そんな事を思いついたのも、上茶谷がいつもと雰囲気が違うと感じたからだ。思わずまりあは両手で頰を覆う。頬が火照っているのを感じる。
『自分の部屋、鍵を締めて』
そう低い声で言われた時、身体の内側、一番深いところにあるものが痺れた。楽器の調律に使う音叉が空気を揺らす感じに似ていたかもしれない。催眠術にかかったように勝手に体が動いて玄関にあるカゴから鍵をとり、鍵穴に鍵をさしいれまわしていた。
かちゃり。
鍵がかかる特有の音。それが誰もいないアパートの通路に響いてハッとした。術が解けた人のようにぼんやり上茶谷を見上げると彼が微笑んだ。あの笑みがまりあの脳裏から離れない。綺麗でせつなくて、そしてどこか甘かったから。
「……でも添い寝するだけだし」
自分にいい聞かせるように呟く。添い寝しようと最初に誘ったのは確かにまりあだった。彼女はひとりでうんうんと頷く。想像以上に似合う髪型にしてもらった高揚感。そしてなにより自分は上茶谷にとって特別なのかもしれない。そんな気持ちが溢れ出して彼の本音を確かめたいと思ってしまった。その勢いのまま添い寝を誘ったものの見事に玉砕、すっぱり断られてしまったのだ。
何をのぼせあがっていたんだろうと、ひたすら恥ずかしさがこみあげてきた。それと一緒に自己嫌悪も襲ってきた。まさに冷水を浴びせられたように目が醒めた心地だったはずだった。それなのになぜかいま上茶谷の寝室、ベッドの端に座っている。
(な、なんだかこれって彼氏を待っているみたいなシチュエーションでは……)
そんな事を思いついたのも、上茶谷がいつもと雰囲気が違うと感じたからだ。思わずまりあは両手で頰を覆う。頬が火照っているのを感じる。
『自分の部屋、鍵を締めて』
そう低い声で言われた時、身体の内側、一番深いところにあるものが痺れた。楽器の調律に使う音叉が空気を揺らす感じに似ていたかもしれない。催眠術にかかったように勝手に体が動いて玄関にあるカゴから鍵をとり、鍵穴に鍵をさしいれまわしていた。
かちゃり。
鍵がかかる特有の音。それが誰もいないアパートの通路に響いてハッとした。術が解けた人のようにぼんやり上茶谷を見上げると彼が微笑んだ。あの笑みがまりあの脳裏から離れない。綺麗でせつなくて、そしてどこか甘かったから。
「……でも添い寝するだけだし」
自分にいい聞かせるように呟く。添い寝しようと最初に誘ったのは確かにまりあだった。彼女はひとりでうんうんと頷く。想像以上に似合う髪型にしてもらった高揚感。そしてなにより自分は上茶谷にとって特別なのかもしれない。そんな気持ちが溢れ出して彼の本音を確かめたいと思ってしまった。その勢いのまま添い寝を誘ったものの見事に玉砕、すっぱり断られてしまったのだ。
何をのぼせあがっていたんだろうと、ひたすら恥ずかしさがこみあげてきた。それと一緒に自己嫌悪も襲ってきた。まさに冷水を浴びせられたように目が醒めた心地だったはずだった。それなのになぜかいま上茶谷の寝室、ベッドの端に座っている。