第193話
文字数 750文字
「違う違う! そんなんじゃないの。あ、ナナちゃん時間大丈夫?」
なんとか無理やり話を切ろうとしたまりあの手首をナナがガシッと掴んだ。まりあは思わずヒッ! とへんな声を出してしまう。
「板野さん」
「……はい」
「二人でお出かけするんですか。車で? 密室ですねー」
ハザードをだして横に停めてあるやたら大きくて立派な外車を横目でちらりとみて、ナナが低い声で呟いた。
「……うん、そうだね」
もう言い訳はできないと、まりあがそう正直に答えるとナナはすっと耳元に口を寄せて問いかけてきた。
「板野さんがお金持ちそうな金髪イケメンと車に乗ってデートにいくって、坂口さんに告げ口してもいいですか?」
ナナを見ると普段はほとんどみせない真顔で、まりあを見つめていた。からかっている様子ではない。彼女は派手で軽そうにみえるけれど曲がったことが嫌いだ。坂口との関係を中途半端にしたまま、他の男とフラフラでかけるまりあの行動に納得がいかないのだろう。それでいて告げ口をわざわざ予告するのも彼女らしい。
「……デートじゃないけど、でもいいよ。坂口くんに言ってくれても構わない」
まりあもまっすぐ見つめ返してそう答える。ナナは驚いたように瞳を見開いてから、そっとまりあの手首を離した。しばらくまりあの顔を見つめたあと、またいつもの笑顔に戻って微笑んだ。
「わかりましたー。板野さんがそこまで言うなら、もう何もいいません」
ナナはその笑みのまま上島にも向き合った。
「あ、私板野さんの会社の後輩で、渡瀬ナナといいますー。おふたりでお出かけなんですね。気をつけて行ってきてください。あ、良かったら今度私も誘ってくださいねー。じゃあこれで失礼しますー」
完璧な営業スマイルでぺこりと頭をさげると、スカートの裾をひらりとなびかせて行ってしまった。
なんとか無理やり話を切ろうとしたまりあの手首をナナがガシッと掴んだ。まりあは思わずヒッ! とへんな声を出してしまう。
「板野さん」
「……はい」
「二人でお出かけするんですか。車で? 密室ですねー」
ハザードをだして横に停めてあるやたら大きくて立派な外車を横目でちらりとみて、ナナが低い声で呟いた。
「……うん、そうだね」
もう言い訳はできないと、まりあがそう正直に答えるとナナはすっと耳元に口を寄せて問いかけてきた。
「板野さんがお金持ちそうな金髪イケメンと車に乗ってデートにいくって、坂口さんに告げ口してもいいですか?」
ナナを見ると普段はほとんどみせない真顔で、まりあを見つめていた。からかっている様子ではない。彼女は派手で軽そうにみえるけれど曲がったことが嫌いだ。坂口との関係を中途半端にしたまま、他の男とフラフラでかけるまりあの行動に納得がいかないのだろう。それでいて告げ口をわざわざ予告するのも彼女らしい。
「……デートじゃないけど、でもいいよ。坂口くんに言ってくれても構わない」
まりあもまっすぐ見つめ返してそう答える。ナナは驚いたように瞳を見開いてから、そっとまりあの手首を離した。しばらくまりあの顔を見つめたあと、またいつもの笑顔に戻って微笑んだ。
「わかりましたー。板野さんがそこまで言うなら、もう何もいいません」
ナナはその笑みのまま上島にも向き合った。
「あ、私板野さんの会社の後輩で、渡瀬ナナといいますー。おふたりでお出かけなんですね。気をつけて行ってきてください。あ、良かったら今度私も誘ってくださいねー。じゃあこれで失礼しますー」
完璧な営業スマイルでぺこりと頭をさげると、スカートの裾をひらりとなびかせて行ってしまった。