第105話
文字数 807文字
上茶谷が後ろに視線を投げかけたからまりあも一緒に振り返る。コンクリートが打ちっぱなしにされた落ち着いた壁にどっしりした立派な木製のドア、そして木枠の大きな窓が見えた。この景色はホームページで見た記憶があった。
「あ、えーと。お店、ここですかね?」
照れたようにそう呟いたまりあを見て上茶谷がふきだす。
「そう、ここ。ほら、行くわよ」
そういって手首を柔らかく掴んで、まりあを入口までつれていく。暖かい上茶谷の指先の感触。やはり気持ちいい。落ち着く。まりあは無意識にこの感触に身を委ねてしまう。
「さ、はいって」
上茶谷が日傘を受け取り手が離されたところで、まりあは不意に心許ない気持ちになってしまう。ドアを押さえて待っていてくれる上茶谷をじっと見つめていると、なに? という表情で微笑まれた。いつもの彼と変わらないはずなのに、なぜかドギマギして首を振り視線を慌てて逸らす。店の中に入るとカウンターにいた背の高い青年が頭を下げた。
「いらっしゃいませ」
「ヤナセくん。今日カットモデルしてもらう板野さん。まずシャンプーなしで流してもらえる? 」
「わかりました。じゃあこちらへ」
ヤナセという若いアシスタントはほんのすこし口元をカーブさせたもののほぼ無表情のまま、まりあを店のなかへ案内する。店の中は想像したよりも広く感じた。高い天井から吊るされたお洒落なライトや黒い木枠の大きな窓、飴色に磨きこまれている木目調の床などどこかでみたニューヨークのアトリエみたいな雰囲気だ。大きな窓からは公園の木々が揺れているのが目に入る。モダンな雰囲気と緑がとけあう気持ちのいい空間をまりあは興味津々で見渡した。
案内された店の奥にあるフラットタイプのシャンプー台に横たわり、顔のうえにタオルが掛けられた時だった。
「板野さんは……ダイゴさ……いえ、上茶谷とお知り合いなんですか?」
どこか控えめに聞いてくるヤナセにまりあはすぐに答えた。
「あ、えーと。お店、ここですかね?」
照れたようにそう呟いたまりあを見て上茶谷がふきだす。
「そう、ここ。ほら、行くわよ」
そういって手首を柔らかく掴んで、まりあを入口までつれていく。暖かい上茶谷の指先の感触。やはり気持ちいい。落ち着く。まりあは無意識にこの感触に身を委ねてしまう。
「さ、はいって」
上茶谷が日傘を受け取り手が離されたところで、まりあは不意に心許ない気持ちになってしまう。ドアを押さえて待っていてくれる上茶谷をじっと見つめていると、なに? という表情で微笑まれた。いつもの彼と変わらないはずなのに、なぜかドギマギして首を振り視線を慌てて逸らす。店の中に入るとカウンターにいた背の高い青年が頭を下げた。
「いらっしゃいませ」
「ヤナセくん。今日カットモデルしてもらう板野さん。まずシャンプーなしで流してもらえる? 」
「わかりました。じゃあこちらへ」
ヤナセという若いアシスタントはほんのすこし口元をカーブさせたもののほぼ無表情のまま、まりあを店のなかへ案内する。店の中は想像したよりも広く感じた。高い天井から吊るされたお洒落なライトや黒い木枠の大きな窓、飴色に磨きこまれている木目調の床などどこかでみたニューヨークのアトリエみたいな雰囲気だ。大きな窓からは公園の木々が揺れているのが目に入る。モダンな雰囲気と緑がとけあう気持ちのいい空間をまりあは興味津々で見渡した。
案内された店の奥にあるフラットタイプのシャンプー台に横たわり、顔のうえにタオルが掛けられた時だった。
「板野さんは……ダイゴさ……いえ、上茶谷とお知り合いなんですか?」
どこか控えめに聞いてくるヤナセにまりあはすぐに答えた。