第235話
文字数 692文字
「仕掛けるなんて人聞きの悪い」
苦笑しながらワインに口を付けた上茶谷を見て、坂口も手に持っていたビール缶のプルトップをひねりあげた。
「なーんか嫌な予感がしたんですよ。だから今日は早めに帰ってきたんですけど、予感は当たりってことでいいんですよね?」
「心配性ね。豪快なようにみえて」
あえて答えずからかうような言葉に替えた上茶谷に、坂口も応じるように片方の眉を軽くあげてみせた。
「そうかもしれません。だから心配してる暇があったら、即行動することにしているんです」
坂口はテーブルの上においてあってグラスにビールを注ぐと一気に飲み干し、うまっと呟いてから上茶谷を見た。
「でもぶっちゃけてしまうと。男二人に好きな女の子ひとりを挟んだ三人暮らしとか。あとから考えたら、よくそんなこと思いついて実行したなって自分に呆れたんですけどね」
坂口が自嘲するような笑みを浮かべたまま続ける。
「三人一緒にいたら揉めるのが普通じゃないですか。それもまあ覚悟の上、揉めるの上等くらいの勢いでしたけど」
坂口が言葉を選びながら話すのを上茶谷も黙って聞く。
「でも俺がイメージしていたような、男同士のせめぎ合いとか圧迫感とかまるでなくて。上茶谷さんから感じるのは……表現するのは難しいですけど、もっと透明で静かな熱みたいなものなんですよ」
そこまで聞いて上茶谷は思わず笑った。
「坂口さんって見た目と違って詩人なのね」
坂口は照れたのか、茶化さないでくださいよと言ってわざと口をへの字にした。
「簡単に言ってしまえば戸惑っているんです。……オス的な圧は感じられないのに、あなたがまりあさんを欲しがっているのはわかるから」
苦笑しながらワインに口を付けた上茶谷を見て、坂口も手に持っていたビール缶のプルトップをひねりあげた。
「なーんか嫌な予感がしたんですよ。だから今日は早めに帰ってきたんですけど、予感は当たりってことでいいんですよね?」
「心配性ね。豪快なようにみえて」
あえて答えずからかうような言葉に替えた上茶谷に、坂口も応じるように片方の眉を軽くあげてみせた。
「そうかもしれません。だから心配してる暇があったら、即行動することにしているんです」
坂口はテーブルの上においてあってグラスにビールを注ぐと一気に飲み干し、うまっと呟いてから上茶谷を見た。
「でもぶっちゃけてしまうと。男二人に好きな女の子ひとりを挟んだ三人暮らしとか。あとから考えたら、よくそんなこと思いついて実行したなって自分に呆れたんですけどね」
坂口が自嘲するような笑みを浮かべたまま続ける。
「三人一緒にいたら揉めるのが普通じゃないですか。それもまあ覚悟の上、揉めるの上等くらいの勢いでしたけど」
坂口が言葉を選びながら話すのを上茶谷も黙って聞く。
「でも俺がイメージしていたような、男同士のせめぎ合いとか圧迫感とかまるでなくて。上茶谷さんから感じるのは……表現するのは難しいですけど、もっと透明で静かな熱みたいなものなんですよ」
そこまで聞いて上茶谷は思わず笑った。
「坂口さんって見た目と違って詩人なのね」
坂口は照れたのか、茶化さないでくださいよと言ってわざと口をへの字にした。
「簡単に言ってしまえば戸惑っているんです。……オス的な圧は感じられないのに、あなたがまりあさんを欲しがっているのはわかるから」