第180話
文字数 644文字
すべての用意が整ってあとは家を出るだけというところで、靴を履くために玄関に座り込んでしまったら、今度はたちあがる気力がなくなってしまった。まりあは抱え込んだ膝のうえに顔を置いて、ぼぉっと古い建付けのドアを眺めてしまう。
塗装がすこし剥げてできた濃淡が人間の顔に見えてきてしまうくらい、じっとそこを眺めていたら気がついた。新聞受けのところに紙が挟まっている。
またチラシかなにかを入れられたのだ。ひとつため息をついたあと、よいしょと言ってノロノロとたちあがり紙の角をひっぱった。思いのほか厚みがある紙で小さい。
「ん?」
上質な紙でできたカード。どうみてもチラシではない。名刺だ。まりあが毎日スマホの画面上でみているロゴが印刷されていて、その下には
株式会社Nuts corporation 代表取締役社長 上島 蒼佑と印字されている。
「え、上島さんて、Nuts musicの社長さんだったの?!」
思わず玄関先で大声をだしてしまい慌てて口を抑えた。Nuts musicはまりあもダウンロードしている音楽アプリで、スマホなどで音楽を聴く人なら一度は使ったことはあるだろうメジャーなアプリだ。一筋縄ではいかなそうな金髪男。一体何をしている人だろうと思っていたが、まさかまりあもよく知るアプリ会社の社長だったとは。思いもよらなかったとため息をつく。しげしげと上島の名刺をみつめ裏側にひっくり返してみると、斜めになっている独特の字体で走り書きがされていた。
『まりあちゃん、 俺と話をしてみない? 』
塗装がすこし剥げてできた濃淡が人間の顔に見えてきてしまうくらい、じっとそこを眺めていたら気がついた。新聞受けのところに紙が挟まっている。
またチラシかなにかを入れられたのだ。ひとつため息をついたあと、よいしょと言ってノロノロとたちあがり紙の角をひっぱった。思いのほか厚みがある紙で小さい。
「ん?」
上質な紙でできたカード。どうみてもチラシではない。名刺だ。まりあが毎日スマホの画面上でみているロゴが印刷されていて、その下には
株式会社Nuts corporation 代表取締役社長 上島 蒼佑と印字されている。
「え、上島さんて、Nuts musicの社長さんだったの?!」
思わず玄関先で大声をだしてしまい慌てて口を抑えた。Nuts musicはまりあもダウンロードしている音楽アプリで、スマホなどで音楽を聴く人なら一度は使ったことはあるだろうメジャーなアプリだ。一筋縄ではいかなそうな金髪男。一体何をしている人だろうと思っていたが、まさかまりあもよく知るアプリ会社の社長だったとは。思いもよらなかったとため息をつく。しげしげと上島の名刺をみつめ裏側にひっくり返してみると、斜めになっている独特の字体で走り書きがされていた。
『まりあちゃん、 俺と話をしてみない? 』