第69話
文字数 474文字
『わたしに触ってもらえませんか?』
あの時まりあの口が勝手にそう言っていた。ほんの少しのアルコールのせいかもしれない。けれどそれはまりあにとってある意味切実な願いだった。今までこんなふうに、男性に触ってほしいなんて思うことなんて一度もなかったのだから。
上茶谷が上島との過去の関係を告白したとき、声は笑っていたけれどその背中はどこか切なげに見えた。胸が締め付けられるように痛くなって、無意識のうちに彼にむかって手を伸ばしていた。
振り返った上茶谷の壊れてしまいそうな笑顔。まるで泣いているみたいだった。そうして気付いたら自分から上茶谷に触れていた。
これまでのことを思い返してみてもまりあは上茶谷にはごく自然に触れてしまうし、先日髪に触られた時もちっとも嫌じゃなかった。けれどかつての恋人には肌感覚ではどこかで拒否していたところがあった。一番深い付き合いだった正人に対してですら上茶谷に感じるような無条件な心地よさはなかった。
(ダイゴさんから触れたら、わたしはどうなるのだろう。ちょっと触れる程度ではなくてお互いの体温が感じられるくらいに触れたら?)
あの時まりあの口が勝手にそう言っていた。ほんの少しのアルコールのせいかもしれない。けれどそれはまりあにとってある意味切実な願いだった。今までこんなふうに、男性に触ってほしいなんて思うことなんて一度もなかったのだから。
上茶谷が上島との過去の関係を告白したとき、声は笑っていたけれどその背中はどこか切なげに見えた。胸が締め付けられるように痛くなって、無意識のうちに彼にむかって手を伸ばしていた。
振り返った上茶谷の壊れてしまいそうな笑顔。まるで泣いているみたいだった。そうして気付いたら自分から上茶谷に触れていた。
これまでのことを思い返してみてもまりあは上茶谷にはごく自然に触れてしまうし、先日髪に触られた時もちっとも嫌じゃなかった。けれどかつての恋人には肌感覚ではどこかで拒否していたところがあった。一番深い付き合いだった正人に対してですら上茶谷に感じるような無条件な心地よさはなかった。
(ダイゴさんから触れたら、わたしはどうなるのだろう。ちょっと触れる程度ではなくてお互いの体温が感じられるくらいに触れたら?)