第84話
文字数 710文字
まりあは、そんな坂口を純粋にすごいと思うし、仕事上頼りにもしている。裏表のない性格で言いたい放題いってくるけれど、なんだかんだ言って彼と話していても楽しい。けれどそれが男女として交際するという話になってしまったら違ってくることを、これまでの経験上まりあは痛いほどわかっていた。しかもナナにだって彼女の恋を応援すると言ってしまったのだ。
(……それにダイゴさん)
やはり上茶谷のことが気になっているのが一番の理由かもしれないとまりあは思う。異性として好きなのかどうか。まりあはずっと考えているけれどやっぱりよくわからない。わかりたくないと言ったほうが正しいのかもしれない。
そもそも上茶谷を異性といっていいのか迷うところだ。話している感覚は仲良しの同性に近い。
けれど一緒にいて落ち着く感覚が、同性の友達といる時のそれとはなにかが違う。身体のどこか深い部分がほろりと緩む感じ。それは生物として男女という組み合わせだからこそ感じる感覚なのかもしれないと思う。
さらには上茶谷になら触られてもイヤじゃない。むしろ気持ちいいと感じてしまう。それは今まで感じたことのない高揚感すら伴って心臓が痛いほど高鳴ってしまう。今までつきあった恋人とは決定的に違う何かが彼にはある。だからこそもっと近づきたい。けれど上茶谷はまりあに対して友だちとしての好感はもってくれていても、恋愛感情はないはずだ。そうであれば今以上の関係は望めない。
まりあが大きくため息をついたその時だった。全く物音がしなかったから無警戒だった背後から、すっと腕が伸びてきて皿の上にのっていたまりあのドーナツが奪われたのだ。
「ええっ?!」
まりあは慌てて後ろを振り返った。
(……それにダイゴさん)
やはり上茶谷のことが気になっているのが一番の理由かもしれないとまりあは思う。異性として好きなのかどうか。まりあはずっと考えているけれどやっぱりよくわからない。わかりたくないと言ったほうが正しいのかもしれない。
そもそも上茶谷を異性といっていいのか迷うところだ。話している感覚は仲良しの同性に近い。
けれど一緒にいて落ち着く感覚が、同性の友達といる時のそれとはなにかが違う。身体のどこか深い部分がほろりと緩む感じ。それは生物として男女という組み合わせだからこそ感じる感覚なのかもしれないと思う。
さらには上茶谷になら触られてもイヤじゃない。むしろ気持ちいいと感じてしまう。それは今まで感じたことのない高揚感すら伴って心臓が痛いほど高鳴ってしまう。今までつきあった恋人とは決定的に違う何かが彼にはある。だからこそもっと近づきたい。けれど上茶谷はまりあに対して友だちとしての好感はもってくれていても、恋愛感情はないはずだ。そうであれば今以上の関係は望めない。
まりあが大きくため息をついたその時だった。全く物音がしなかったから無警戒だった背後から、すっと腕が伸びてきて皿の上にのっていたまりあのドーナツが奪われたのだ。
「ええっ?!」
まりあは慌てて後ろを振り返った。