第92話
文字数 700文字
「単刀直入にきたね」
「そりゃ、そうでしょ。その話しに来たんだから。さっさと話さないとすぐに着いちゃうわよ」
上島はクスリとわらう。
「心配ご無用。少し遠回りするつもりだから」
そう言って勝手に首都高速の入口にはいってしまう。
「どこいくのよ」
上茶谷が呆れたように呟いても上島は楽しげな笑みを浮かべてみせる。
「目的なく走ろうかなって。夜の首都高、走るの好きだから」
彼の言葉に、上茶谷は肩を竦めた。
「あなたはそういう人だったわね。私は用もないのにこんなカーブばかりの狭い高速、しかも夜に走りたいなんて一ミリも思わないけどね」
「その言い方。相変わらずだな」
上島は真っ直ぐ前を向いたまま楽しそう笑う。狭いニ人だけの空間で響く上島の笑い声。その横顔をみていたらかつての時間が巻き戻る感覚に陥りそうになり、上茶谷は背筋を伸ばした。
「話を戻すけど。あなたリカコさんに何を言ったの?」
上島は軽い笑みを唇に浮かべたまま首をふってみせる。
「俺が何かを言ったというより話を聞いてたんだよ。愚痴とかね。ここ一年くらいかな」
「蒼佑には愚痴を言えたのね。私には何も言わなかったのに」
これまでリカコは、店を経営するのは大変だと軽い調子でボヤくことはあったけれど、上茶谷が詳しく話を聞こうとしても大丈夫だから、としか言わなかった。彼女とは十年以上の付き合いで尚且つ信頼されている。上茶谷はそう思っていた。だからリカコからいきなりラリュールの経営権を譲渡することは決定事項だと言われたことに、少なからず動揺した。リカコが上茶谷を蔑 ろにしている訳じゃないのは分かっている。頭ではそう理解をしていても心はどこか毛羽立ってしまうのだ。
「そりゃ、そうでしょ。その話しに来たんだから。さっさと話さないとすぐに着いちゃうわよ」
上島はクスリとわらう。
「心配ご無用。少し遠回りするつもりだから」
そう言って勝手に首都高速の入口にはいってしまう。
「どこいくのよ」
上茶谷が呆れたように呟いても上島は楽しげな笑みを浮かべてみせる。
「目的なく走ろうかなって。夜の首都高、走るの好きだから」
彼の言葉に、上茶谷は肩を竦めた。
「あなたはそういう人だったわね。私は用もないのにこんなカーブばかりの狭い高速、しかも夜に走りたいなんて一ミリも思わないけどね」
「その言い方。相変わらずだな」
上島は真っ直ぐ前を向いたまま楽しそう笑う。狭いニ人だけの空間で響く上島の笑い声。その横顔をみていたらかつての時間が巻き戻る感覚に陥りそうになり、上茶谷は背筋を伸ばした。
「話を戻すけど。あなたリカコさんに何を言ったの?」
上島は軽い笑みを唇に浮かべたまま首をふってみせる。
「俺が何かを言ったというより話を聞いてたんだよ。愚痴とかね。ここ一年くらいかな」
「蒼佑には愚痴を言えたのね。私には何も言わなかったのに」
これまでリカコは、店を経営するのは大変だと軽い調子でボヤくことはあったけれど、上茶谷が詳しく話を聞こうとしても大丈夫だから、としか言わなかった。彼女とは十年以上の付き合いで尚且つ信頼されている。上茶谷はそう思っていた。だからリカコからいきなりラリュールの経営権を譲渡することは決定事項だと言われたことに、少なからず動揺した。リカコが上茶谷を