第24話
文字数 787文字
上島が二十代半ばに起業して十年たつ。彼が作った音楽アプリは若者の間であっという間にひろがり、ダウンロード数は国内有数を誇る。それと比例して会社も急成長した。いわゆる新興IT企業の社長だ。
「ところでその隣のちんちくりんちゃんって何? 隣のトトロ的な?」
上目遣いに上茶谷をみて、興味津々というように聞いてくる。
「そうね。カテゴリーでいったらそういうジャンルかも」
昔みた映画を上茶谷は思い浮かべる。背が小さくてちまちま動く感じは、トトロというよりはトトロにくっついている子分たちに似ている。いやあれは弟たちなのか。そんな事を想像したら思わずふきだしてしまった。
「なんだよ。大悟が思い出し笑いとか。珍しいな」
じっと上茶谷のことを観察するようにみていた上島が驚いたように笑う。
「ごめんなさい。つい」
動きに予想できない唐突さがあり、上茶谷のいうことにいちいち目をまんまるにして反論してくる様子はアニメキャラクターにぴたりとハマる。上島はふーんと呟いたあと口を開いた。
「大悟、まだあの江古田のオンボロアパートに住んでるの? もっといいトコ住めるだろ、お前なら」
その言葉にすぐには答えず上島にカット用のケープを掛ける。
「オンボロなんて失礼ね。見た目は古いけど意外と中はしっかりしてるし、駅から近いし。そもそもほとんど部屋になんていないんだから、家賃にお金をかけたくないもの」
「相変わらずそういうところ、しっかりしてるなあ」
そういって屈託なく笑う上島の笑顔を一瞬ぼんやりみつめてしまったあと、上茶谷はすぐに目を逸らした。
「悪かったわね。じゃあカットして軽く整えてから、カラーしましょうか」
さりげなく個人的な話を断ち切り鋏を動かし始める。シャキシャキと髪が切れる音だけがしばらく響いたあと、上島が口を開いた。
「お前が出ていった代々木上原のマンション、あそこに最近また戻ったんだ」
「ところでその隣のちんちくりんちゃんって何? 隣のトトロ的な?」
上目遣いに上茶谷をみて、興味津々というように聞いてくる。
「そうね。カテゴリーでいったらそういうジャンルかも」
昔みた映画を上茶谷は思い浮かべる。背が小さくてちまちま動く感じは、トトロというよりはトトロにくっついている子分たちに似ている。いやあれは弟たちなのか。そんな事を想像したら思わずふきだしてしまった。
「なんだよ。大悟が思い出し笑いとか。珍しいな」
じっと上茶谷のことを観察するようにみていた上島が驚いたように笑う。
「ごめんなさい。つい」
動きに予想できない唐突さがあり、上茶谷のいうことにいちいち目をまんまるにして反論してくる様子はアニメキャラクターにぴたりとハマる。上島はふーんと呟いたあと口を開いた。
「大悟、まだあの江古田のオンボロアパートに住んでるの? もっといいトコ住めるだろ、お前なら」
その言葉にすぐには答えず上島にカット用のケープを掛ける。
「オンボロなんて失礼ね。見た目は古いけど意外と中はしっかりしてるし、駅から近いし。そもそもほとんど部屋になんていないんだから、家賃にお金をかけたくないもの」
「相変わらずそういうところ、しっかりしてるなあ」
そういって屈託なく笑う上島の笑顔を一瞬ぼんやりみつめてしまったあと、上茶谷はすぐに目を逸らした。
「悪かったわね。じゃあカットして軽く整えてから、カラーしましょうか」
さりげなく個人的な話を断ち切り鋏を動かし始める。シャキシャキと髪が切れる音だけがしばらく響いたあと、上島が口を開いた。
「お前が出ていった代々木上原のマンション、あそこに最近また戻ったんだ」