第274話
文字数 919文字
ゲイであることを隠していた繊細な彼を追いつめ、ナナものたうちまわるほど苦しんだ。相手だけでなく自分も壊れそうになっても、彼が欲しいということしか考えられなくなっていた。あの人はそんなことなど望んでいなかったのに。溺愛を突き詰めると、溺れるほど誰かにのめりこんだ自分に陶酔している状態なのかもしれない。ナナはにっこり微笑んだ。
「まりあさん、ノロケているところ申し訳ないですけどツッコミいれてもいいですかー?」
「はい?」
「まりあさんは溺愛デキマセーン」
「えええ?! 断言しちゃう?」
わざと頬を膨らませてみせるまりあをナナは微笑みながら見つめる。ポカポカとした温泉みたいなこの人は、愛する人を追いつめたり傷つける前に身を引くだろう。逆に彼女の温もりにハマって抜けられなくなった男のほうが、まりあを追いかける。坂口がそうだ。まりあの恋人もおそらくそうだろう。
「いい意味で言ってますー。まりあさんは溺愛するよりされる側ですから。実際彼氏さんにめっちゃ愛されてるしー」
「そうなのかなあ……。彼に会ってないのになんでわかるの?」
「そりゃ場数 踏んでますから。わかっちゃうんですー」
ナナの言葉にくしゃりと表情を崩して笑う横顔。幸せそうなのに微かな憂いもにじませたまりあは、以前よりもずっと綺麗になった。ナナはふと思う。
まりあでも。かつてナナが捉われていた
柔らかな日差しのような彼からの愛情。それが身体の最奥までは届かないもどかしさ。狂おしいまでに獰猛 でやるせないあの感覚を。
ナナはそんな心の内を微塵も見せずにっこり微笑みながら言った。
「私も今度まりあさんちに遊びに行きたいですー。なんなら坂口さんと一緒に」
まりあと美形の恋人がこれからどうなるのか見届けたい。ナナが見たくても見れなかった未来がそこにあるのかもしれない。坂口の今後も気になる。彼ほどの根性と実行力があれば困難をくぐり抜け、まりあの恋人から彼女を奪う可能性もないことは無い。それでもやっぱり彼の想いが野に砕け散ったとしたら?
(砕け散った坂口さん、拾い集めちゃおうかなー)
そんなこと思いついてナナはひとり微笑んだ。
まりあさんは溺愛デキナイ 了
「まりあさん、ノロケているところ申し訳ないですけどツッコミいれてもいいですかー?」
「はい?」
「まりあさんは溺愛デキマセーン」
「えええ?! 断言しちゃう?」
わざと頬を膨らませてみせるまりあをナナは微笑みながら見つめる。ポカポカとした温泉みたいなこの人は、愛する人を追いつめたり傷つける前に身を引くだろう。逆に彼女の温もりにハマって抜けられなくなった男のほうが、まりあを追いかける。坂口がそうだ。まりあの恋人もおそらくそうだろう。
「いい意味で言ってますー。まりあさんは溺愛するよりされる側ですから。実際彼氏さんにめっちゃ愛されてるしー」
「そうなのかなあ……。彼に会ってないのになんでわかるの?」
「そりゃ
ナナの言葉にくしゃりと表情を崩して笑う横顔。幸せそうなのに微かな憂いもにじませたまりあは、以前よりもずっと綺麗になった。ナナはふと思う。
まりあでも。かつてナナが捉われていた
あの
感覚を抱えていたりするのだろうか。柔らかな日差しのような彼からの愛情。それが身体の最奥までは届かないもどかしさ。狂おしいまでに
ナナはそんな心の内を微塵も見せずにっこり微笑みながら言った。
「私も今度まりあさんちに遊びに行きたいですー。なんなら坂口さんと一緒に」
まりあと美形の恋人がこれからどうなるのか見届けたい。ナナが見たくても見れなかった未来がそこにあるのかもしれない。坂口の今後も気になる。彼ほどの根性と実行力があれば困難をくぐり抜け、まりあの恋人から彼女を奪う可能性もないことは無い。それでもやっぱり彼の想いが野に砕け散ったとしたら?
(砕け散った坂口さん、拾い集めちゃおうかなー)
そんなこと思いついてナナはひとり微笑んだ。
まりあさんは溺愛デキナイ 了