第106話
文字数 830文字
「知り合いというかお隣さんです。ダイゴさんは、たまたまわたしの部屋の隣に住んでいるんです」
ヤナセが一瞬手を止めた。驚いた気配があったのがまりあに見えなくてもわかった。
「たまたま住んでたお隣さん、ですか」
そう呟いた後はヤナセはなにも言わず淡々とシャワーで髪をすすぐ。洗髪が少し乱暴な美容師もいるけれど彼は丁寧な仕事ぶりだった。まりあはヤナセの驚いた様子が気になって、たずねてしまう。
「……あの、お隣さんがお店にくるとびっくりしちゃいます?」
少し考えるような間があってからゆっくりとした口調で答えが返ってきた。
「いえ。失礼なこと言ってしまいすみません。僕がこの店にはいってからダイゴさんがカットモデルを呼ぶのは初めてで、しかも予約や撮影でスケジュールがぎっちりな中、だったんで。ダイゴさんがそこまでするのって一体どんな方なのかと思ったんです」
「え、そうなんですか?」
今度はまりあがびっくりしてしまう。ヤナセはシャワーを止めて髪を絞り、まりあの顔の上にあったタオルを取った。それからゆっくり椅子の背をたて髪の毛をタオルで拭きながら、言葉を続ける。
「はい。それにダイゴさんがあんなに慌てて外に飛び出して、お客様をお出迎えしているのも初めて見ました」
まりあはなんだか上茶谷の特別な存在になったような気がして心臓が高鳴るのを抑えることができない。
「わたし、ぼおっとしちゃってお店の前を通り過ぎそうになっちゃったんです。それを見ていたダイゴさんが、慌てて追いかけてくれたんですね」
嬉しくてでもなんだか気恥ずかしくて。まりあはモゴモゴとそんな風に言うと、ヤナセは淡々と爆弾発言を落としてきた。
「あの、もしかして板野さんは、ダイゴさんの彼女さんなのですか?」
一瞬ポカンとした表情になってまりあはふり返ってヤナセをみた。彼はやっぱり無表情だ。何気なく聞いてきたのだとわかっていても、まりあはかぁっと頬が熱くなるのを止められない。目をまんまるにしてぶんぶんと首を振る。
ヤナセが一瞬手を止めた。驚いた気配があったのがまりあに見えなくてもわかった。
「たまたま住んでたお隣さん、ですか」
そう呟いた後はヤナセはなにも言わず淡々とシャワーで髪をすすぐ。洗髪が少し乱暴な美容師もいるけれど彼は丁寧な仕事ぶりだった。まりあはヤナセの驚いた様子が気になって、たずねてしまう。
「……あの、お隣さんがお店にくるとびっくりしちゃいます?」
少し考えるような間があってからゆっくりとした口調で答えが返ってきた。
「いえ。失礼なこと言ってしまいすみません。僕がこの店にはいってからダイゴさんがカットモデルを呼ぶのは初めてで、しかも予約や撮影でスケジュールがぎっちりな中、だったんで。ダイゴさんがそこまでするのって一体どんな方なのかと思ったんです」
「え、そうなんですか?」
今度はまりあがびっくりしてしまう。ヤナセはシャワーを止めて髪を絞り、まりあの顔の上にあったタオルを取った。それからゆっくり椅子の背をたて髪の毛をタオルで拭きながら、言葉を続ける。
「はい。それにダイゴさんがあんなに慌てて外に飛び出して、お客様をお出迎えしているのも初めて見ました」
まりあはなんだか上茶谷の特別な存在になったような気がして心臓が高鳴るのを抑えることができない。
「わたし、ぼおっとしちゃってお店の前を通り過ぎそうになっちゃったんです。それを見ていたダイゴさんが、慌てて追いかけてくれたんですね」
嬉しくてでもなんだか気恥ずかしくて。まりあはモゴモゴとそんな風に言うと、ヤナセは淡々と爆弾発言を落としてきた。
「あの、もしかして板野さんは、ダイゴさんの彼女さんなのですか?」
一瞬ポカンとした表情になってまりあはふり返ってヤナセをみた。彼はやっぱり無表情だ。何気なく聞いてきたのだとわかっていても、まりあはかぁっと頬が熱くなるのを止められない。目をまんまるにしてぶんぶんと首を振る。