第244話
文字数 645文字
「あ、ホントだ。もう行かないと」
「俺もそろそろ出なきゃ。ヤレヤレ、このあとめんどくさい打ち合わせがあるんだよな」
上島はそうボヤキながらも伝票をさっと取って立ち上がると、まりあに向かって微笑んだ。
「まりあちゃん、またね」
「あ、またお会計……上島さん、すいません。いつもご馳走様です」
まりあがぺこりと頭を下げると、彼は微笑んだ。
「どういたしまして。今度は夜に飲みにいこーね。いい店知ってるから」
まりあに向かって軽く手を振り横を通り抜けようとした上島に、坂口がなにかを囁いた。歩みが止まる。そして数秒坂口を無表情でじっと見つめた後、ウィスキーグラスのなかに浮かぶ氷が揺れたような、クールな笑みを浮かべて上島が呟いた。
「ふーん。やれるものならやってみな」
微かに尖った視線をむけたまま微笑む。それから上島は何事もなかったようにすっと背を向けて行ってしまった。
「坂口くん、上島さんに何を言ったの?」
「……いえ、別に。たいしたことじゃないですから」
口ではそういいながらも、坂口は何かを考えているような表情で上島の後ろ姿が見えなくなるまでじっと見ていた。それからひとつ小さな吐息をついて、いつもの笑顔で微笑んだ。
「さ、行きましょう。昼休み、終わっちゃいますよ」
坂口はその後なんの前触れもなく、まりあの手を握った。
「さ、坂口くん?」
彼は問いかけに答えず、彼女の手首を軽く掴んでどんどん歩みを進めていく。店からでても手を離さない。これまで坂口と手を繋いで歩いたことなどなかったまりあは困惑する。
「俺もそろそろ出なきゃ。ヤレヤレ、このあとめんどくさい打ち合わせがあるんだよな」
上島はそうボヤキながらも伝票をさっと取って立ち上がると、まりあに向かって微笑んだ。
「まりあちゃん、またね」
「あ、またお会計……上島さん、すいません。いつもご馳走様です」
まりあがぺこりと頭を下げると、彼は微笑んだ。
「どういたしまして。今度は夜に飲みにいこーね。いい店知ってるから」
まりあに向かって軽く手を振り横を通り抜けようとした上島に、坂口がなにかを囁いた。歩みが止まる。そして数秒坂口を無表情でじっと見つめた後、ウィスキーグラスのなかに浮かぶ氷が揺れたような、クールな笑みを浮かべて上島が呟いた。
「ふーん。やれるものならやってみな」
微かに尖った視線をむけたまま微笑む。それから上島は何事もなかったようにすっと背を向けて行ってしまった。
「坂口くん、上島さんに何を言ったの?」
「……いえ、別に。たいしたことじゃないですから」
口ではそういいながらも、坂口は何かを考えているような表情で上島の後ろ姿が見えなくなるまでじっと見ていた。それからひとつ小さな吐息をついて、いつもの笑顔で微笑んだ。
「さ、行きましょう。昼休み、終わっちゃいますよ」
坂口はその後なんの前触れもなく、まりあの手を握った。
「さ、坂口くん?」
彼は問いかけに答えず、彼女の手首を軽く掴んでどんどん歩みを進めていく。店からでても手を離さない。これまで坂口と手を繋いで歩いたことなどなかったまりあは困惑する。