第73話
文字数 820文字
上茶谷から目を離せなくなる。微熱を帯びたような切れ長の瞳 に見つめられていたら熱伝導したように、首筋から背中のあたりに熱いものが走った。そんな瞳をかつてつきあった彼氏に見た事があった。まりあを求めた時に宿していたのと同じ種類のもの。以前はそんな目で見られたら背中あたりがひやりとしていたのに。上茶谷の瞳は甘く痺れるような期待でまりあの心を震わせる。早くこのもどかしさをなんとかしてほしい。初めての感じた切迫感に本能的にごくりと喉を鳴らしてしまう。
上茶谷が瞳を緩めた。それと一緒に甘く不穏な空気もゆっくり消えていく。それからいつもと同じように穏やかに微笑んだ。まりあが見た男の顔をした上茶谷は幻なのだというように。
「怖がらせちゃった?」
その言い方もいつもの上茶谷だった。力が抜けて大きな吐息をついてしまう。まりあの心にじわじわと広がったのは小さな失望感。それと同時にからかわれたことへの反発心も首をもたげてくる。
「怖いわけないです。ダイゴさんだから」
まっすぐ強気な瞳で上茶谷を見上げると彼は切れ長の瞳を微かに見開いた。
「それより。わたしが何を考えていたか早くて教えてください、ダイゴさん」
上茶谷はまりあのことをどう思っているのだろう。その答えを知りたい。まりあはじっと彼を見上げる。上茶谷も目を細めてまりあを見つめている。二人は目を逸らさないという勝負をしているみたいだった。先に勝負から降りてしまったのは上茶谷だった。視線を逸しどこか力が抜けた笑みを浮かべてから、腕の力も抜いてまりあの上に全体重をかけてきたのだ。
「ぐえっ! ぐ、ぐるしー!」
いきなりきた圧迫感に驚いてまりあが叫ぶと、上茶谷はごめんねと笑ってすぐ力を緩め、まりあを抱きしめ直す。胸のあたりに顔をおしつけられているから彼の顔はみえなかった。けれど耳元に響いてきた声は、答えは言わないくせにまりあの鼓膜を濡らすように甘く揺らした。
「……また添い寝してね。まりあさん」
上茶谷が瞳を緩めた。それと一緒に甘く不穏な空気もゆっくり消えていく。それからいつもと同じように穏やかに微笑んだ。まりあが見た男の顔をした上茶谷は幻なのだというように。
「怖がらせちゃった?」
その言い方もいつもの上茶谷だった。力が抜けて大きな吐息をついてしまう。まりあの心にじわじわと広がったのは小さな失望感。それと同時にからかわれたことへの反発心も首をもたげてくる。
「怖いわけないです。ダイゴさんだから」
まっすぐ強気な瞳で上茶谷を見上げると彼は切れ長の瞳を微かに見開いた。
「それより。わたしが何を考えていたか早くて教えてください、ダイゴさん」
上茶谷はまりあのことをどう思っているのだろう。その答えを知りたい。まりあはじっと彼を見上げる。上茶谷も目を細めてまりあを見つめている。二人は目を逸らさないという勝負をしているみたいだった。先に勝負から降りてしまったのは上茶谷だった。視線を逸しどこか力が抜けた笑みを浮かべてから、腕の力も抜いてまりあの上に全体重をかけてきたのだ。
「ぐえっ! ぐ、ぐるしー!」
いきなりきた圧迫感に驚いてまりあが叫ぶと、上茶谷はごめんねと笑ってすぐ力を緩め、まりあを抱きしめ直す。胸のあたりに顔をおしつけられているから彼の顔はみえなかった。けれど耳元に響いてきた声は、答えは言わないくせにまりあの鼓膜を濡らすように甘く揺らした。
「……また添い寝してね。まりあさん」