第198話
文字数 715文字
音が聞こえてしまっただろうか。恐る恐るまりあが顔をあげると、礼儀として笑うのを我慢しているのがわかる上島と目が合った。
「そんなに腹がすいてんのになんで食べないの? もしかしてまりあちゃんて我慢するのが快感なひと?」
からかうようにそう言ってくる上島に対して、まりあはブンブンと首を振る。
「違いますっ! じゃあ遠慮なくいただきます」
両手を合わせて軽く頭を下げてから小鉢に箸を伸ばし、揚げなすと鱧にミョウガをたっぷりのせて口に運ぶ。絡まっている調味料の爽やかな酸味と絶妙な甘さ、ミョウガの辛みがあっさりした鱧に舌の上で絡まって無意識のうちに心の叫びが声になって出してしまう。
「お、おいしー!」
空腹は最大の調味料というけれどそれを差し引いても、食いしん坊のまりあを唸らせる美味しさだった。上島が目の前にいるのを一瞬忘れて、今度は目を閉じて味わう。これはまりあの好きな味だと微笑みながら頷く。
「美味そうに食べるなあ」
感心したようにそう言われてハタと気づく。そうだった。上島とご飯をたべているのにまた完全に油断してしまった。まりあは思わずグラスを手にとってビールを流し込む。飲みながら空きっ腹にアルコールが染み込んだらいけないと気づいて、すぐに口を離して大きく吐息をつく。それから目の前にいる上島を見上げた。
「本当にすごく美味しくて。すいません、子供みたいで」
「いやいや謝らないでよ。そこまで喜んで貰えたら、連れてきた甲斐があったなって俺も嬉しいから」
機嫌よく笑う上島に場が和んでいるのを感じたまりあは、これ以上油断するまえに本題に入らなくてはと背筋を伸ばして彼にたずねた。
「ええと。そろそろ上島さんのお話を伺ってもいいですか?」
「そんなに腹がすいてんのになんで食べないの? もしかしてまりあちゃんて我慢するのが快感なひと?」
からかうようにそう言ってくる上島に対して、まりあはブンブンと首を振る。
「違いますっ! じゃあ遠慮なくいただきます」
両手を合わせて軽く頭を下げてから小鉢に箸を伸ばし、揚げなすと鱧にミョウガをたっぷりのせて口に運ぶ。絡まっている調味料の爽やかな酸味と絶妙な甘さ、ミョウガの辛みがあっさりした鱧に舌の上で絡まって無意識のうちに心の叫びが声になって出してしまう。
「お、おいしー!」
空腹は最大の調味料というけれどそれを差し引いても、食いしん坊のまりあを唸らせる美味しさだった。上島が目の前にいるのを一瞬忘れて、今度は目を閉じて味わう。これはまりあの好きな味だと微笑みながら頷く。
「美味そうに食べるなあ」
感心したようにそう言われてハタと気づく。そうだった。上島とご飯をたべているのにまた完全に油断してしまった。まりあは思わずグラスを手にとってビールを流し込む。飲みながら空きっ腹にアルコールが染み込んだらいけないと気づいて、すぐに口を離して大きく吐息をつく。それから目の前にいる上島を見上げた。
「本当にすごく美味しくて。すいません、子供みたいで」
「いやいや謝らないでよ。そこまで喜んで貰えたら、連れてきた甲斐があったなって俺も嬉しいから」
機嫌よく笑う上島に場が和んでいるのを感じたまりあは、これ以上油断するまえに本題に入らなくてはと背筋を伸ばして彼にたずねた。
「ええと。そろそろ上島さんのお話を伺ってもいいですか?」