第182話
文字数 576文字
『ダイゴさんが傍にいないなんて……やっぱりイヤです!』
そう言って泣き出しそうな瞳で見上げてきたまりあの顔が、上茶谷の脳裏にこびりついて離れない。行かないで。そう言われ手首をキュッと握られたときは心臓まで掴まれたような心地になった。まりあの手のひらの感触がまだ、握りしめられた手首に残っているような気がして、思わず指先でなぞる。
上島とラリュールを共同経営すること決め、その流れでこのアパートから引越しをすることも決めた。まりあと距離を置く。それが二人にとって必要だと思ったから葛藤を封じ込めて決心したはずだった。けれどあんなふうに取り乱したまりあを見てしまうと、これで良かったのか正しかったのかと自問自答してしまう。
上茶谷が大きなため息をつくと、目の前でコーヒーを飲んでいた上島が笑った。
「なんだよ。せっかく部屋に入れてもらったって喜んでいたのに、ずっと目の前でため息つくとかひどくない?」
上島がからかうようにそういうから上茶谷は軽く彼を睨む。
「あなたがコーヒーくらい飲ませろって無理やりはいって来たんでしょ。文句言わないで飲みなさいよ」
「ハイハイ」
上島は肩をすくめてカップをもちあげ、もうひと口飲んだあと、すこし真面目な表情になって上茶谷を見つめた。
「俺を
そう言って泣き出しそうな瞳で見上げてきたまりあの顔が、上茶谷の脳裏にこびりついて離れない。行かないで。そう言われ手首をキュッと握られたときは心臓まで掴まれたような心地になった。まりあの手のひらの感触がまだ、握りしめられた手首に残っているような気がして、思わず指先でなぞる。
上島とラリュールを共同経営すること決め、その流れでこのアパートから引越しをすることも決めた。まりあと距離を置く。それが二人にとって必要だと思ったから葛藤を封じ込めて決心したはずだった。けれどあんなふうに取り乱したまりあを見てしまうと、これで良かったのか正しかったのかと自問自答してしまう。
上茶谷が大きなため息をつくと、目の前でコーヒーを飲んでいた上島が笑った。
「なんだよ。せっかく部屋に入れてもらったって喜んでいたのに、ずっと目の前でため息つくとかひどくない?」
上島がからかうようにそういうから上茶谷は軽く彼を睨む。
「あなたがコーヒーくらい飲ませろって無理やりはいって来たんでしょ。文句言わないで飲みなさいよ」
「ハイハイ」
上島は肩をすくめてカップをもちあげ、もうひと口飲んだあと、すこし真面目な表情になって上茶谷を見つめた。
「俺を
ダシ
に使ったんだから、コーヒーくらい出してもらってもバチは当たらないと思うんだけどね」