第109話
文字数 685文字
「油断しまくって寛 いでいる小動物みたいだったわよ」
上茶谷にそうからかわれてまりあは苦笑しながら拗ねたフリをする。
「……すいません。いい歳をして油断しまくってまして」
まりあの言葉に上茶谷が考えるような表情をうかべて動きを止めた。鏡に映る彼を見つめると、上茶谷がふわりと微笑んだ。
「すごく可愛いって意味よ?」
真剣にそう言ってくれたような声に今度はまりあが静止する。それからかぁっと頬が紅く染まるのが鏡にまともに映り、さらに恥ずかしくなる。
「あ、あう」
何か気の利いた言葉でも返そうとしたけれど、ドキドキしすぎて、アザラシみたいなうめき声しかでなかった。上茶谷はそんなまりあをみて、瞳を見開いたあとふきだした。やっぱり動物だわねと上茶谷はまた楽しそうに笑った。それからほんのすこし間をあけて言葉を続ける。
「……そういえば、一昨日まりあと一緒にいた会社の同僚、えーと坂口くんだっけ?」
「……あ、はい」
上茶谷の問いかけで、フワフワ飛んでいた意識がまりあの身体に着地して戻ってきた気がした。上茶谷はすこし考えるように視線を泳がせたあとそっとたずねてくる。
「彼、でしょ? まりあのこと好きだって言ってたの」
まりあは否定も肯定もせず、ただ鏡越しに上茶谷をみつめる。
「……どうみても彼、まりあのこと好きよね。私、睨まれたわよ。まりあの勘違いじゃないわね」
彼の言葉にまりあはぎこちなく微笑んだ。
「そうですね。坂口くんに告白されましたから……」
今度は上茶谷の動きが止まった。それからゆっくり視線をあげてまりあをみた。見つめあったのは恐らく数秒、けれどまりあにはもっと長く感じた。
上茶谷にそうからかわれてまりあは苦笑しながら拗ねたフリをする。
「……すいません。いい歳をして油断しまくってまして」
まりあの言葉に上茶谷が考えるような表情をうかべて動きを止めた。鏡に映る彼を見つめると、上茶谷がふわりと微笑んだ。
「すごく可愛いって意味よ?」
真剣にそう言ってくれたような声に今度はまりあが静止する。それからかぁっと頬が紅く染まるのが鏡にまともに映り、さらに恥ずかしくなる。
「あ、あう」
何か気の利いた言葉でも返そうとしたけれど、ドキドキしすぎて、アザラシみたいなうめき声しかでなかった。上茶谷はそんなまりあをみて、瞳を見開いたあとふきだした。やっぱり動物だわねと上茶谷はまた楽しそうに笑った。それからほんのすこし間をあけて言葉を続ける。
「……そういえば、一昨日まりあと一緒にいた会社の同僚、えーと坂口くんだっけ?」
「……あ、はい」
上茶谷の問いかけで、フワフワ飛んでいた意識がまりあの身体に着地して戻ってきた気がした。上茶谷はすこし考えるように視線を泳がせたあとそっとたずねてくる。
「彼、でしょ? まりあのこと好きだって言ってたの」
まりあは否定も肯定もせず、ただ鏡越しに上茶谷をみつめる。
「……どうみても彼、まりあのこと好きよね。私、睨まれたわよ。まりあの勘違いじゃないわね」
彼の言葉にまりあはぎこちなく微笑んだ。
「そうですね。坂口くんに告白されましたから……」
今度は上茶谷の動きが止まった。それからゆっくり視線をあげてまりあをみた。見つめあったのは恐らく数秒、けれどまりあにはもっと長く感じた。