第2話
文字数 885文字
恋愛に溺れることができない。そんな自分の淡白さに気づいたのはいつだったのだろう。まりあは思いを巡らす。
『マリアさまは博愛主義だから、一人だけ特別扱いできないんだよな』
高校生の時初めて付き合った彼にそうイヤミを言われたことを思い出してしまい、思わず口をへの字にしてしまった。友達にお膳立てされたとはいえ、まりあから告白したにも関わらずやっぱり最初から対応が淡白だったのだろう。それ以降他の人と付き合ってみても、どこか醒めた感覚がつきまとった。どうしても恋愛に関しては傍観者のように眺めてしまいのめりこむことができない。
男女問わず友だちは一定数いるし好奇心も旺盛なほうだから、心底淡白な人間ではないはずだ。ただし彼氏という存在に対してはどうしても一歩引いてしまう。そんなまりあでも正人に別れを切り出されて、胸がギュッと痛くなったのは事実だ。一年たってもこうして思い出してしまうくらいの分量、正人のことをまりあなりにちゃんと想っていた。たぶん歴代彼氏のなかで一番好きだったはずだ。結婚してもいいと思うくらいだったのだから。
友達の彼から紹介されて知り合った正人は、真面目で誠実にみえたし、なにより時々照れたように笑う笑顔がよかった。正人から連絡先を交換しようといわれた時は久しぶりに胸がときめいた。告白されて付き合うことになり、年齢も三十を間近に控え、最初から結婚を意識していたのもあったかもしれない。
正人はすこし頑固なところもあり急に怒って黙り込むこともあった。けれどまりあの方が年上だったし、機嫌が悪そうなときはさらりとかわすようにして上手くやってきたつもりだった。正人だって何かしらまりあに苛立つこともあっただろう。けれどお互いに微調整しながら時を重ねていけば、このまま結婚するだろうだと思っていた。
恋愛において激しい感情の起伏はいらなかった。穏やかにパートナーとして過ごしていければそれでいい。そう考えていた矢先に切り出された別れ。正人は悲しげに笑いながらいった言葉が忘れられない。
『俺がいなくても、まりあは平気なんだよな。たぶん、俺じゃなくてもいいんだよ』
『マリアさまは博愛主義だから、一人だけ特別扱いできないんだよな』
高校生の時初めて付き合った彼にそうイヤミを言われたことを思い出してしまい、思わず口をへの字にしてしまった。友達にお膳立てされたとはいえ、まりあから告白したにも関わらずやっぱり最初から対応が淡白だったのだろう。それ以降他の人と付き合ってみても、どこか醒めた感覚がつきまとった。どうしても恋愛に関しては傍観者のように眺めてしまいのめりこむことができない。
男女問わず友だちは一定数いるし好奇心も旺盛なほうだから、心底淡白な人間ではないはずだ。ただし彼氏という存在に対してはどうしても一歩引いてしまう。そんなまりあでも正人に別れを切り出されて、胸がギュッと痛くなったのは事実だ。一年たってもこうして思い出してしまうくらいの分量、正人のことをまりあなりにちゃんと想っていた。たぶん歴代彼氏のなかで一番好きだったはずだ。結婚してもいいと思うくらいだったのだから。
友達の彼から紹介されて知り合った正人は、真面目で誠実にみえたし、なにより時々照れたように笑う笑顔がよかった。正人から連絡先を交換しようといわれた時は久しぶりに胸がときめいた。告白されて付き合うことになり、年齢も三十を間近に控え、最初から結婚を意識していたのもあったかもしれない。
正人はすこし頑固なところもあり急に怒って黙り込むこともあった。けれどまりあの方が年上だったし、機嫌が悪そうなときはさらりとかわすようにして上手くやってきたつもりだった。正人だって何かしらまりあに苛立つこともあっただろう。けれどお互いに微調整しながら時を重ねていけば、このまま結婚するだろうだと思っていた。
恋愛において激しい感情の起伏はいらなかった。穏やかにパートナーとして過ごしていければそれでいい。そう考えていた矢先に切り出された別れ。正人は悲しげに笑いながらいった言葉が忘れられない。
『俺がいなくても、まりあは平気なんだよな。たぶん、俺じゃなくてもいいんだよ』