第61話
文字数 697文字
そこでまりあは一旦言葉を切る。ビールが入って少し紅くなった頬を手のひらでぺたりと包んで少し考えるような表情で呟いた。
「あ、でもわたしが食べたらあの金髪の方が怒るかな」
気遣うような、それでいてどこかズレた受け答えがまりあらしいと上茶谷は笑みをこぼした。
「怒らないわよ。むしろ食べきって貰ったほうが喜ぶわ」
上茶谷は立ち上がってキッチンへいき、電子レンジにおやきをセットする。解凍されていく様子をじっとみているとまりあも空いた皿をもってきて流しに置いた。
「彼とは……蒼佑とは数年前までつきあっていたのよ」
まりあが振り返って彼をみている気配がしたけれど、上茶谷は仕上がりまでの時間がカウントダウンがされている数字をじっと見つめる。
「だけど今はもう関係ない。ただの知り合い。あ、お客さんでもあるわね。そのお客さんにいきなり、自宅におやきなんて持ってこられてもね」
上茶谷は基本的に自分のことを話すのは好きじゃない。それが軽い酔いで心が緩んでしまったのかもしれない。らしくないと自分を嗤う。電子レンジから仕上がりを知らせるメロディが流れた。
「でもおやきに罪はないから。食べてあげないと」
照れ隠しのようにそうつぶやいてレンジの扉を開けようとしたら、背中にふわりと暖かい感触を感じた。まりあの手のひらがそっと彼の背中に触れたのだ。
「……ケジメをつけたはずの人がいきなり現れたら混乱しますよね」
その触れ方と声はごく控えめで寄り添う人特有の温かさがあった。ゆっくりと振り返ると心配そうに上茶谷を見上げているまりあの視線とぶつかる。上茶谷はなんの意図も飾りもない、ごく自然な笑みが口元に浮かぶのを感じた。
「あ、でもわたしが食べたらあの金髪の方が怒るかな」
気遣うような、それでいてどこかズレた受け答えがまりあらしいと上茶谷は笑みをこぼした。
「怒らないわよ。むしろ食べきって貰ったほうが喜ぶわ」
上茶谷は立ち上がってキッチンへいき、電子レンジにおやきをセットする。解凍されていく様子をじっとみているとまりあも空いた皿をもってきて流しに置いた。
「彼とは……蒼佑とは数年前までつきあっていたのよ」
まりあが振り返って彼をみている気配がしたけれど、上茶谷は仕上がりまでの時間がカウントダウンがされている数字をじっと見つめる。
「だけど今はもう関係ない。ただの知り合い。あ、お客さんでもあるわね。そのお客さんにいきなり、自宅におやきなんて持ってこられてもね」
上茶谷は基本的に自分のことを話すのは好きじゃない。それが軽い酔いで心が緩んでしまったのかもしれない。らしくないと自分を嗤う。電子レンジから仕上がりを知らせるメロディが流れた。
「でもおやきに罪はないから。食べてあげないと」
照れ隠しのようにそうつぶやいてレンジの扉を開けようとしたら、背中にふわりと暖かい感触を感じた。まりあの手のひらがそっと彼の背中に触れたのだ。
「……ケジメをつけたはずの人がいきなり現れたら混乱しますよね」
その触れ方と声はごく控えめで寄り添う人特有の温かさがあった。ゆっくりと振り返ると心配そうに上茶谷を見上げているまりあの視線とぶつかる。上茶谷はなんの意図も飾りもない、ごく自然な笑みが口元に浮かぶのを感じた。