第45話
文字数 524文字
上茶谷の部屋のドアに寄りかかっていた長身の身体が小さく揺れた。それから苦笑とため息をこぼす。
「どこに行ったのかと思ったら。隣のちんちくりんちゃんの部屋にいたんだ。なんだか楽しそうだな」
「……蒼佑」
上島がゆっくりと近づいてきて、目の前に立った。不意に現れた上島に虚をつかれたものの、上茶谷はなんとか冷静さを保って彼の名を呼ぶ。二人はそのまましばらく沈黙していた。互いの感情を探り合うようなピリピリした空気が漂う。その雰囲気にじれたように上島が口を開きかけた時だ。止まっていた空気を先に動かしたのは無防備にあけられたドアだった。
「あ、ダイゴさーん! よかったあ。まだそこにいたんですね! これ渡すのを忘れてたんですよ! ぶつけたお見舞いに買ってきたマドレーヌとガナッシュ! 話をしていたら渡すのをすっかり忘れてて……」
ドアから顔をひょっこりのぞかせ、さきほどまでと全くかわらない調子のまりあが話しながら、焼き菓子がはいった紙袋を差し出して廊下にでてきた。けれど上茶谷の前にいる、強い視線で見つめてくる男の存在に気づいて立ち止まる。そしてびっくりしたようにぽかんと口を開けたまま黙ってしまった。三人は同じその空間で、時を止めたように動かなくなった。
「どこに行ったのかと思ったら。隣のちんちくりんちゃんの部屋にいたんだ。なんだか楽しそうだな」
「……蒼佑」
上島がゆっくりと近づいてきて、目の前に立った。不意に現れた上島に虚をつかれたものの、上茶谷はなんとか冷静さを保って彼の名を呼ぶ。二人はそのまましばらく沈黙していた。互いの感情を探り合うようなピリピリした空気が漂う。その雰囲気にじれたように上島が口を開きかけた時だ。止まっていた空気を先に動かしたのは無防備にあけられたドアだった。
「あ、ダイゴさーん! よかったあ。まだそこにいたんですね! これ渡すのを忘れてたんですよ! ぶつけたお見舞いに買ってきたマドレーヌとガナッシュ! 話をしていたら渡すのをすっかり忘れてて……」
ドアから顔をひょっこりのぞかせ、さきほどまでと全くかわらない調子のまりあが話しながら、焼き菓子がはいった紙袋を差し出して廊下にでてきた。けれど上茶谷の前にいる、強い視線で見つめてくる男の存在に気づいて立ち止まる。そしてびっくりしたようにぽかんと口を開けたまま黙ってしまった。三人は同じその空間で、時を止めたように動かなくなった。