第160話
文字数 775文字
坂口は照れたように微笑んだあと、ゆっくりと手を離す。まりあは手のひらに残った余韻に痺れたような感覚を覚えて思わず握りしめた。
「いや、でもお前の存在が嫌だって言われたら、もうどうしようもないですけど」
頭をかいた坂口にまりあもそんな事をいうわけないでしょ、と一緒に笑ってしまう。硬かった空気が緩みしばらく穏やかな会話が続く。ひととおり料理をたべ終えてから、坂口が切り出してきた。
「……あの人のこと、聞いてもいいですか。うん、大丈夫。ちゃんと冷静に話をします」
まりあは心持ち緊張したように背筋を伸ばしてから頷いた。坂口が言葉を選ぶようにゆっくりと話し出す。
「……間違っていたらすいません。あの人ゲイ、じゃないですか? こないだまりあさんのアパートで見た、一緒にいた男性との雰囲気でそうかなって。いや、ゲイって括りではないのかもしれないけれど」
まりあは動きを止める。やはり坂口にも上島と上茶谷の間にある空気は伝わっていたのだ。まりあは遠慮がちに微笑んだ。
「ゲイだとかそういうことは……考えてなくて。ただ一緒にいると、全く違和感なくてとても心が落ち着くの。彼も私と一緒にいると、穏やかな気持ちになれるっていってくれるから」
坂口の肩先がほんのすこし揺れる。それでも冷静さを保とうとしているのかひとつ吐息をついた。
「……そうなんですね」
坂口は一言ぽつりとそう呟いたあとしばらく考えを巡らせるように黙った。ビールを一口飲んでから口を開く。
「俺、同性同士で付き合う人たちに偏見はもっていないつもりです。実際俺も高校のとき、下級生の男に告られたことありますし」
「ええっ!?」
まりあは目を真ん丸にして、隣の席にも聞こえてしまいそうな大声をだしてしまい、慌てて口を押さえる。坂口も肩の力が抜けたように、そのリアクション今日イチっすねと言って楽しそうに微笑んだ。
「いや、でもお前の存在が嫌だって言われたら、もうどうしようもないですけど」
頭をかいた坂口にまりあもそんな事をいうわけないでしょ、と一緒に笑ってしまう。硬かった空気が緩みしばらく穏やかな会話が続く。ひととおり料理をたべ終えてから、坂口が切り出してきた。
「……あの人のこと、聞いてもいいですか。うん、大丈夫。ちゃんと冷静に話をします」
まりあは心持ち緊張したように背筋を伸ばしてから頷いた。坂口が言葉を選ぶようにゆっくりと話し出す。
「……間違っていたらすいません。あの人ゲイ、じゃないですか? こないだまりあさんのアパートで見た、一緒にいた男性との雰囲気でそうかなって。いや、ゲイって括りではないのかもしれないけれど」
まりあは動きを止める。やはり坂口にも上島と上茶谷の間にある空気は伝わっていたのだ。まりあは遠慮がちに微笑んだ。
「ゲイだとかそういうことは……考えてなくて。ただ一緒にいると、全く違和感なくてとても心が落ち着くの。彼も私と一緒にいると、穏やかな気持ちになれるっていってくれるから」
坂口の肩先がほんのすこし揺れる。それでも冷静さを保とうとしているのかひとつ吐息をついた。
「……そうなんですね」
坂口は一言ぽつりとそう呟いたあとしばらく考えを巡らせるように黙った。ビールを一口飲んでから口を開く。
「俺、同性同士で付き合う人たちに偏見はもっていないつもりです。実際俺も高校のとき、下級生の男に告られたことありますし」
「ええっ!?」
まりあは目を真ん丸にして、隣の席にも聞こえてしまいそうな大声をだしてしまい、慌てて口を押さえる。坂口も肩の力が抜けたように、そのリアクション今日イチっすねと言って楽しそうに微笑んだ。