第19話
文字数 855文字
「すいませーん。入力の仕方がイマイチわからないとこあるんで、見てもらっていいですかー」
揺れる栗色の長い髪。鳥がはばたいているような立派なまつげに縁取られた瞳。ぽってりとした唇から発せられる語尾を妙に伸ばす口調。そんなナナに反感を持つ女性社員はチラホラいる。ただその媚びているように聞こえる喋り方は、相手が老若男女問わず全方位。誰に対しても公平にその喋り方だ。前に一度、どうして語尾が伸びるのか聞いたら、敬語を使うとなぜかそうなってしまうらしい。
話してみると性格はおおらかで細かいことはあまり気にしないタイプだとまりあは感じていた。それでも業務上のことで注意をしたら素直に聞いて同じミスはしないし、度胸の良さもあって上司やお客さんに対しても、いいにくい正論をズバッと展開したりする。ナナのそんなギャップをまりあは面白いと思っていた。
「いいよー。どこー?」
ついつられて、まりあまで語尾が長くなってしまう。笑い噛み殺しながら立ち上がりナナの席にいってパソコンの画面を覗き込む。
「あ、えっとー、ここの入力なんですー。この火災保険契約の金額なんですがーこれでいいのかちょっと不安になりましてー。約款のどこをみたらわかりますかー」
ナナがカーソルを移動させて指し示す。
「これ? ちょっと待って。前にわたしも調べたことあったかも……」
まりあはナナのパソコンから約款のPDFを開いて、検索キーワードをいれて該当箇所をピックアップする。それからモニターに映る文章をスクロールしながら目で追いかける。
「……あ、これだこれだ。あー、これならこの数値のままで大丈夫そうだね」
「あ、よかった。ありがとうございますー」
「どういたしましてー」
そういって二人で顔を見合わせたあと、どちらからともなく吹きだしてしまう。
「あのー板野さん。もうひとつ聞いてもいいですかー」
「うん、いいよ。なに」
笑いが収まった後、ナナにしては珍しく、少しためらうように間を空けた後、声をひそめてたずねてきた。
「板野さんは坂口さんのこと、どう思ってます?」
揺れる栗色の長い髪。鳥がはばたいているような立派なまつげに縁取られた瞳。ぽってりとした唇から発せられる語尾を妙に伸ばす口調。そんなナナに反感を持つ女性社員はチラホラいる。ただその媚びているように聞こえる喋り方は、相手が老若男女問わず全方位。誰に対しても公平にその喋り方だ。前に一度、どうして語尾が伸びるのか聞いたら、敬語を使うとなぜかそうなってしまうらしい。
話してみると性格はおおらかで細かいことはあまり気にしないタイプだとまりあは感じていた。それでも業務上のことで注意をしたら素直に聞いて同じミスはしないし、度胸の良さもあって上司やお客さんに対しても、いいにくい正論をズバッと展開したりする。ナナのそんなギャップをまりあは面白いと思っていた。
「いいよー。どこー?」
ついつられて、まりあまで語尾が長くなってしまう。笑い噛み殺しながら立ち上がりナナの席にいってパソコンの画面を覗き込む。
「あ、えっとー、ここの入力なんですー。この火災保険契約の金額なんですがーこれでいいのかちょっと不安になりましてー。約款のどこをみたらわかりますかー」
ナナがカーソルを移動させて指し示す。
「これ? ちょっと待って。前にわたしも調べたことあったかも……」
まりあはナナのパソコンから約款のPDFを開いて、検索キーワードをいれて該当箇所をピックアップする。それからモニターに映る文章をスクロールしながら目で追いかける。
「……あ、これだこれだ。あー、これならこの数値のままで大丈夫そうだね」
「あ、よかった。ありがとうございますー」
「どういたしましてー」
そういって二人で顔を見合わせたあと、どちらからともなく吹きだしてしまう。
「あのー板野さん。もうひとつ聞いてもいいですかー」
「うん、いいよ。なに」
笑いが収まった後、ナナにしては珍しく、少しためらうように間を空けた後、声をひそめてたずねてきた。
「板野さんは坂口さんのこと、どう思ってます?」