第37話
文字数 683文字
「ダイゴさんはフットワーク軽くていいなあと思って。わたしの知っている男の人は、全然動かないというか、こういう時なにをしていいかわからない人ばかりだったんですよ」
まりあはしみじみそう言う。それから切り替えたようにニコッと微笑み、おまたせしましたといってお盆をテーブルに置いた。上茶谷は目の前に座ったまりあを見つめた。童顔で若く見えるけれど彼女も三十一だという。過去に付き合っていた恋人のことでも思い出したのかもしれない。上茶谷はそれ以上なにもいわず微笑んだ。
「あら、美味しそう! まりあが自慢するだけあるわね」
ローテーブルの上にふたつ並んだどんぶりからほわほわと温かそうな湯気が立ち上っている。茹でた白いうどんの上にはいい感じにしんなりしたネギと半熟のとじ卵、そして真ん中から真っ二つに切られているえび天が載っている。上茶谷は凍りついていた食欲がとけだしてくるのを感じた。
「でしょう? あとこれ。母が漬けた白菜の漬物なんですけどよかったら一緒にどうぞ」
まりあはそういって、うどんの横に小さな小鉢も置く。
「でも悪かったわね。私がきたからエビが半分になっちゃって」
小さくなったエビを見つめながらいうと、まりあはふふふと笑う。
「全然いいですよ。会社帰りに寄ればいつも安売りしてる海老天ですから」
まりあの得意げな笑み。それが伝染ったように上茶谷も一緒にふふと笑ってしまう。まりあがニコニコしたまま、じゃあたべましょうと箸をもったから、上茶谷も両手を合わせて頂きますと頭をさげ割り箸をふたつに割った。それからあまり話もせず、うどんを静かに啜る音だけがふたりの間に響く。
まりあはしみじみそう言う。それから切り替えたようにニコッと微笑み、おまたせしましたといってお盆をテーブルに置いた。上茶谷は目の前に座ったまりあを見つめた。童顔で若く見えるけれど彼女も三十一だという。過去に付き合っていた恋人のことでも思い出したのかもしれない。上茶谷はそれ以上なにもいわず微笑んだ。
「あら、美味しそう! まりあが自慢するだけあるわね」
ローテーブルの上にふたつ並んだどんぶりからほわほわと温かそうな湯気が立ち上っている。茹でた白いうどんの上にはいい感じにしんなりしたネギと半熟のとじ卵、そして真ん中から真っ二つに切られているえび天が載っている。上茶谷は凍りついていた食欲がとけだしてくるのを感じた。
「でしょう? あとこれ。母が漬けた白菜の漬物なんですけどよかったら一緒にどうぞ」
まりあはそういって、うどんの横に小さな小鉢も置く。
「でも悪かったわね。私がきたからエビが半分になっちゃって」
小さくなったエビを見つめながらいうと、まりあはふふふと笑う。
「全然いいですよ。会社帰りに寄ればいつも安売りしてる海老天ですから」
まりあの得意げな笑み。それが伝染ったように上茶谷も一緒にふふと笑ってしまう。まりあがニコニコしたまま、じゃあたべましょうと箸をもったから、上茶谷も両手を合わせて頂きますと頭をさげ割り箸をふたつに割った。それからあまり話もせず、うどんを静かに啜る音だけがふたりの間に響く。