第75話
文字数 717文字
恋人でも多少気を使うところがあった上茶谷が、まりあの発するのんびりまったりオーラに包まれたら催眠術にかかったように一気に眠りに落ちてしまったのだ。
一緒にいるとパズルのピースがピタリとはまるように妙にしっくりきて、心が凪いでいく。そのくせあの小さなつぶらな瞳でじっと見つめられると、波に遊ばれている小舟に乗っているような落ち着かない気持ちにもなる。胸の奥あたりでなにか暖かいけれど、よく分からないものが疼く感じ。それは同性の恋人に感じる感覚に似ていて、微妙に違うものだ。
まりあは少しづつけれど確実に、いままで女性に感じたことがなかった感情を上茶谷の元にせっせと運んでくる。それがすこしづつ積み重なって、大事な何かが見えてきそうな感覚に上茶谷は正直戸惑っていた。
「いませんよ。恋人 なんて。リカコさんも知ってるじゃないですか」
あえてキッパリとそういうとリカコはじっと上茶谷を見つめた。それから鼻の頭にシワを寄せて笑った。彼女が気を許した人間だけにみせるくだけた笑みだった。
「ふうん。いやなんかね、カミちゃん自然体でいい表情 してるから。それに上島くんもカミちゃんのプライベートを妙に気にしているし、恋人でもできたのかなって思っただけ」
その言葉に上茶谷はまた大きくため息をついてしまう。上島はもともとリカコの知り合いだ。リカコが独立後、異業種交流会などに顔を出すようになってやはり会社を始めようとしていた当時大学院生だった上島と知り合い、客として彼が店にやってきたのがそもそもの出会いだった。リカコは上茶谷と上島の関係を知っていたし、二人が別れたあとも経営者としてのつながりで、定期的に上島と連絡を取り合っているという話は聞いていた。
一緒にいるとパズルのピースがピタリとはまるように妙にしっくりきて、心が凪いでいく。そのくせあの小さなつぶらな瞳でじっと見つめられると、波に遊ばれている小舟に乗っているような落ち着かない気持ちにもなる。胸の奥あたりでなにか暖かいけれど、よく分からないものが疼く感じ。それは同性の恋人に感じる感覚に似ていて、微妙に違うものだ。
まりあは少しづつけれど確実に、いままで女性に感じたことがなかった感情を上茶谷の元にせっせと運んでくる。それがすこしづつ積み重なって、大事な何かが見えてきそうな感覚に上茶谷は正直戸惑っていた。
「いませんよ。
あえてキッパリとそういうとリカコはじっと上茶谷を見つめた。それから鼻の頭にシワを寄せて笑った。彼女が気を許した人間だけにみせるくだけた笑みだった。
「ふうん。いやなんかね、カミちゃん自然体でいい
その言葉に上茶谷はまた大きくため息をついてしまう。上島はもともとリカコの知り合いだ。リカコが独立後、異業種交流会などに顔を出すようになってやはり会社を始めようとしていた当時大学院生だった上島と知り合い、客として彼が店にやってきたのがそもそもの出会いだった。リカコは上茶谷と上島の関係を知っていたし、二人が別れたあとも経営者としてのつながりで、定期的に上島と連絡を取り合っているという話は聞いていた。