第108話
文字数 688文字
まりあがそう言い切ると上茶谷はほんの少し瞳を見開いて、それから微笑んだ。
「了解。任せて。可愛くしてあげる」
そうしてまりあの髪にハサミを入れ始めた。ジッと彼の手元を見つめる。上茶谷はどこまでもソフトタッチだ。それでいてハサミの使い方は細かく丁寧で無駄がない。さらさらと上茶谷の指先から自分の髪の毛が何度もこぼれ落ちるのを見るのも、シャキシャキと切れ味良い規則正しいハサミの音も心地いい。
そしてなによりも上茶谷に触れられているのはやっぱり気持ちが良かった。まりあはその感触にうっとりしてしまう。ふんわりした優しい眠気がまわりの音楽、物音を遠ざけてただただ上茶谷の触れてくる感触に心地よく身を委ねてしまう。
そのあとにパーマやカラーもしてもらったけれどいつもは長く感じるそれらの施術は、あっという間だった。舞い上がるような高揚感とは違う。上川のせせらぎが聞こえる森のなかにいるようだとまりあは思う。
「まりあ」
「え?」
上茶谷がいきなり話しかけてきたので意識が半分飛んでいたまりあは瞳を見開いて、鏡のなかの上茶谷を見つめ返す。
「カラーも終わったからちょっと置いておくわね。……リラックスしまくって半分意識とんでたわね」
上茶谷がまりあを面白そうに見つめる。備え付けのタブレットや自分のスマホをいじることもなく、ぼおっとしている間に時間が経っていたことに気づく。
「ダイゴさんにやってもらってるとめちゃくちゃ気持ちよくて、意識が遠のいちゃうんですよ」
反論するようにそう言って笑う。初めてきた敷居の高そうな青山の美容室。それなのにまりあはこんなに美容室でリラックスしたことはなかった。
「了解。任せて。可愛くしてあげる」
そうしてまりあの髪にハサミを入れ始めた。ジッと彼の手元を見つめる。上茶谷はどこまでもソフトタッチだ。それでいてハサミの使い方は細かく丁寧で無駄がない。さらさらと上茶谷の指先から自分の髪の毛が何度もこぼれ落ちるのを見るのも、シャキシャキと切れ味良い規則正しいハサミの音も心地いい。
そしてなによりも上茶谷に触れられているのはやっぱり気持ちが良かった。まりあはその感触にうっとりしてしまう。ふんわりした優しい眠気がまわりの音楽、物音を遠ざけてただただ上茶谷の触れてくる感触に心地よく身を委ねてしまう。
そのあとにパーマやカラーもしてもらったけれどいつもは長く感じるそれらの施術は、あっという間だった。舞い上がるような高揚感とは違う。上川のせせらぎが聞こえる森のなかにいるようだとまりあは思う。
「まりあ」
「え?」
上茶谷がいきなり話しかけてきたので意識が半分飛んでいたまりあは瞳を見開いて、鏡のなかの上茶谷を見つめ返す。
「カラーも終わったからちょっと置いておくわね。……リラックスしまくって半分意識とんでたわね」
上茶谷がまりあを面白そうに見つめる。備え付けのタブレットや自分のスマホをいじることもなく、ぼおっとしている間に時間が経っていたことに気づく。
「ダイゴさんにやってもらってるとめちゃくちゃ気持ちよくて、意識が遠のいちゃうんですよ」
反論するようにそう言って笑う。初めてきた敷居の高そうな青山の美容室。それなのにまりあはこんなに美容室でリラックスしたことはなかった。